誰からも理解されずとも、己の行動の価値は己で決める

 恋の季節、誰もが異性へのアピールに没頭する中、ただひとり我が道をゆく奇妙な男のお話。

 およそ上記一文の他には要約のしようがない、というか、これ以上はどうやってもネタバレになってしまう作品です。
 よって、以下にはネタバレを含みますのでご注意を。



〈 この先ネタバレ注意! 〉

 読み始めて即「少なくともシリアスな物語ではない」とわかる、この親切な書きぶりというか、〝基本ルールのわからせ方〟みたいなのが好き。

 童話のようなコメディのようなお話……には違いないのですけれど、でもその上での終盤の盛り上がりが本当に最高でした。
 周りから変なやつだと思われていた異端のはぐれものが、何も持たないままに奇跡を起こす物語なんですよこれ……こういうのに弱いので本当にたまりません。

 特に最後の大オチが好きです。
 絶対叶うはずのない異種恋愛。要は悲恋で、だけどどうしてか応援したくなっちゃう。
 単純なコメディ的な面白さだけでなく、物語全体に通底するなにか「前向きさ」のようなものが嬉しい作品でした。