第11話
「事件は解決まで書かれていたけど、その後の何て言うか、締めというか、例えば友田がそういう人間になった理由、幼い頃から貧乏でとかの環境だったり、男に騙されたとか、それに金に執着した理由とか、読者に多少同情させるような記述があって、初めて良い作品だと言われるんです。そこが無い。書く前に眠らされた。
残念だなあ。出版できないじゃない」
鴻上出版の石井が嘆く。
「石井さん、そこっ、僕らで加えませんか?未完成作品として出版しても良いですけど?」
「お〜、その手も有るな。どうする両方用意をして会社に判断してもらいましょうか?」
「で、どっちが出版するんだ?」
二人は暫し睨み合う。
「そうだ、解答は?石井さんあってましたか?」
「お前こそどうだったのよ」
「僕はダメでした」
「正直だなお前は、ここで俺は合ってたと言ったら、お前は負けで、うちから出版ってなるんだぞ」
「え〜そんな、出鱈目な」
「バカ、それがこの業界だ」
「で、どうだったんですか?石井さんは?」
「外した」
「ははは、良かったあ」
「じゃあ、共同出版という事で良いな」
「はい、明日、上司と相談しますんで、明後日石井さんに電話入れます」
「分かった、うちも直ぐ判断する。だけど、文章はどっちが書くんだ?」
「はい、それなら僕が書きます。以前に投稿小説で賞もらった事も有りますから。大丈夫です」
「えっ、お前作家か?」
「いえ〜、出版社で働きながら懸賞金目当ての小説を書こうと思ってるだけですから」
「ほ〜、次できたら俺に小説見せろ。評価してやるから」
「そんなうまいこと言って、自分のとこから出版する気ですね」
「あら〜、俺、お前に余計な知恵つけちゃったあ」
軽挙妄動作家殺人事件 きよのしひろ @sino19530509
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