第10話

 石井と佐田は丘頭警部から原稿の写しを読む。



 探偵の加賀山は研田に全員を食堂に集めさせる。

 全員の前で加賀山が謎を解こうとしている。

「先ず、戸代みおさんの殺害犯人は、亡くなった友田利香さんです。」

「え〜、利香がそんなあ」

「まあ、聞いてください。彼女の荷物を調べさせて頂きました。首を吊った時の紐の切れ端が出てきました。恐らく捨てたはずが見逃したのでしょう」

「それは何処にでも売ってる紐じゃないの?」O L二人は彼女を庇おうとする。

「そうです。しかし、食堂のゴミ箱からポリエチレンの透明な手袋が出てきました。それに被害者の髪の毛が1本ついていました。それと汗か油かわかりませんが内側に指紋が薄く見えました。写真に撮って色を付けて、友田さんの指紋と照合したら一致しました。さらに、友田さんの両方の手のひらに紐の跡が残されていました。申し上げたことは全て写真に撮り警察へ転送しております。毛髪は科学鑑定できないので地球に帰ってからとなりますが、間違いない・・・それと、状況証拠になりますが、友田さんはサウナから真っ直ぐ被害者の部屋へ行ってます。濡れた裸足の足跡が室内に残っていたんです。」

「何で、妻を・・」

「友田さんは証券ウーマンでした。戸代みおさんのバッグに証券が多数有りました。事務所に調査させたら、紙屑同然になってました。電話履歴が船に乗ってからも数回あります。それで揉めていたんだと思います。想像ですが、無理な勧誘をして、会社に訴えるとかじゃないですか?お友達もそういう勧誘をしていたとおっしゃってましたし」

「バカな奴だ。金カネってばかり言ってるからこういう目に遭うんだ」苦汁虫を噛み潰したような顔をする。

「戸代さん、元は貴方が浮気ばかりして

奥さんを不安にさせるから、お金に頼るしかなかったんじゃないでしょうかねえ?」

口を返さずふんと他所を向く。


「それで、友田さんを殺害したのは、あなた、戸代さんですね!」

「な、何をいうか。俺はそんな奴とは関係ない。株も今聞いたばかりだ。それにアリバイもある。そこの彼女が展望室で俺を見たと言ったじゃないか」

「そりゃーそうでしょう。貴方の浮気相手なんだから」

「また、何をバカなことを」

「いちいち、ばかばか言わないで下さい。貴方と風鈴さんとの不倫現場を山田さんが写真に撮ってるんですよ」

そういって山田氏から提供してもらった写真をテーブルに置く。談笑している写真、抱きついている写真、ホテルから出てくる写真。

戸代三次の顔から血の気が引いた。

「だからって、無関係なその女を何で殺さないとダメなんだ!」

「それは脅迫されたからですよ。あなた奥さんが殺された後、食堂でお互いに殺したでしょうとやり合いましたよね。それを目撃されたんですよ、彼女のスマホに二人の会話が録音されてました。ここにいる添乗員さんもたまたま食堂にいて、話を聞いてしまって販売機の陰から出るに出れなかったと仰ってます。それと、戸一さんがサウナに入ろうとした時、風鈴さんは話しかけましたよね。10分くらいリラク室の男女共通部分にいましたよね。サウナへの出入り口に戸一さんが背を向けるような位置で。少し大袈裟な声だったり音をたててましたよね。戸一さんはなにか違和感を感じたそうですが、まさか自分の後ろを殺人犯が通り抜けているなんて思いもしませんもんね。だから、恐らく戸代さんは展望室からサウナ室そして展望室に戻った。その後、風鈴さんも展望室に来てアリバイを証言した。そう言うことですよ、あなた方のしたことは。それに、展望室にいた戸代さんの靴が濡れてまして、あちこちに足跡を残しているんですよ。サウナ室の床を誰かが濡らしちゃったんでしょうね。

私があなたに事情を聞いたときに気づいたんです。どうして貴方の靴が濡れているんだろうって。何か反論有りますか?」

戸代さんは拳を強く握って悔しがる。

「くそっ、あの女が下手な脅しなんかしなきゃ殺すことなんかなかったのに、畜生!」

「風鈴さん、貴女も殺人の幇助になるんでしょうね」

風鈴さんは無言で涙を流していた。

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