フィクションだからこそできたミクスチャー

 「悪役令嬢なんて実際の乙女ゲーにはいない」という言説を耳にしたことがあります。発言した人物の有無や正当性はさておき、実際と異なる展開が幅広く受け入れられた結果、こんにちの悪役令嬢ものの隆盛があるのだと考えます。
 さておき、「乙女ゲーでは煩雑なゲーム性が避けられがち」というのは、実際数々の例を目にできる話です。コンシューマでは読み物ゲームが大半であり(例外はRPG式の戦闘要素を含む「遙かなる時空の中で」シリーズでしょうか?)、女性向けアプリでもパズルや育成が主体な様からも見て取れることかもしれません。実際は有名RPGにも固定女性ファンが多く、食い合わせが極端に悪いわけではないはずですが……。

 そんな現実を軽やかに跳躍するのがフィクション……小説ならではだと感じました。
 まだ10話未満ですが、「高難易度な死に覚えゲー」と「煩雑なゲーム性が避けられがちな乙女ゲー」という異なるコンセプトのミクスチャーは、作中冒頭にあるとおり水と油の組み合わせと呼べるでしょう。だからこそ混ざった時の感動はひとしおでしょうし、ダークでハードコアな戦闘描写の合間に現れる男性キャラの興味深さには、今後の展開を期待させるに十分な魅力だと感じました。