第13話 釘
職人、、、、としての腕はあるのだろう。
何を作っているのかは知らないが、綺麗にできているような気がする。
ひょっとしてバイクのマフラーとかも作れたりするのかな?バイクの部品が作れるならいつかはバイク一台を作ってもらいたい。
「とりあえず今日はここまでにするかー」
クロエがタオルで汗を拭きながら言う。
コイツは本当に貴族のお嬢様なのだろうか?
ちょうどいい。マフラーは別に変える気はないが、作れるのか単純に気になる。
「クロエはなんでも作れるのか?」
バイクには燃料が必要だ。消耗品の交換もいる。そして、いつかはぶっ壊れる。燃料は探すしかない。消耗品は、、、タイヤは難しそうだが、ブレーキのディスクとかなら加工技術があればバイクそのものを作ることが出来るだろう。
「形の再現ならすぐに。何か仕組みや機能があるならそれを理解しなければ難しい」
どのくらいの精度だ?
入り口に停めてあるバイクをクロエの前に押していく。
「これ。マフラーって言うんだけど」
何度も言うが別にマフラーを変えたいわけじゃない。1番簡単そうに見えるからだ。
「筒状?厚さはどのくらい?」
気のせいかお嬢様のテンションが上がってきた。
軍手のような手袋をはめてアイスピックみたいなの手に持って、先端ではなく、棒の部分でコツコツとマフラーを叩く。
「いけそうね。でもその、マフラーっていうのはどこからどこまで?外せるなら外したいんだけど」
工具箱みたいなのを持ってくる。
この国の規格は地球と同じなのだろうか?
「六角レンチ、ソケット、レンチとかある?プラスマイナスのドライバーとか。あっ、ごめんあんまり名前はっきり覚えてない」
確かこれが有ればいいみたいなのを雑誌で見た気がする、、、最悪別の工具で無理矢理、、なんてこともできる。
「なにそれー!まぁいいわ。見たらわかるかもしれない」
クロエがしゃがみ込む。
「ここから先が外れるから、こことここについてるナットを回して外せばいい」
多分あってるはずだ。
「回す、、、引っこ抜くんじゃなくて?でもこの形なら大丈夫そう。この辺りで、大きさが合えば」
名前は知らないが、使えそうな工具が何個か出される。
並べられた工具の一つを手に取りナットを回す。
「使えそう」
ナットに負担はかかるが、ペンチみたいなよくわからん独特な工具がちょうど使えそうだった。
「外すところ見ていてもいいかしら」
「もちろん」
借りた工具で無理矢理回す。
「へぇそんな風になってるんだ。回すタイプの釘、見たことはあるんだけどね。こんな細かく溝があるのは存在してないね」
この国の発展度合いはその程度なのか。
固定してるものがなくなったので、マフラーを揺さぶりながら外す。
「こんなの。作れそう?」
純正品の重たいマフラーを渡す。
「作れるわ。全く同じのを作ればいいの?」
作れると言い切った。流石である。
「いや、作れるのか分かっただけで十分だ」
作業が増えて迷惑になるといけない。俺の手伝う量も増える。
「なんでよ」
なぜか不満そうだ。
「お金がない。っていうのが一つと、他に作りたいものがあるってのがもう一つ」
「お金なんて要らないわ。どうせ貴方が貰うお金は私から払われるんだから。あと他に作りたいものって?」
お金のことは問題ないと言ってくれることに期待してしまった自分が少し嫌いだ。まぁ厚意には乗るが、、、
「これを一から作りたい」
そう言ってバイクを指差す。
そうだ異世界でツーリングしよう〜のんびり相棒と異世界旅〜え!鍛冶娘も来るの!? @sae_na
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