山岳信仰や修験道など、古来から山は、異質な存在との境界でした。
本作では、標高1000メートル以上の山々に、現代の境界が現れます。
山核(さんかく)と呼ばれる異質な存在に隔絶され、国土とライフラインを寸断された日本は、山核狩猟隊による脅威の排除、山核登頂隊による境界の解放、そして山核救助隊による支援活動で、組織抵抗を開始しました。
主人公の開(かい)と百合香(ゆりか)は、山核救助隊で出会います。
それぞれに傷を隠し、弱さへの怒りを胸に沈めて、救うことでなにかをあがなうために。
一方で、山核からもたらされる異質な技能・物質をめぐって、人の欲望、政府の思惑、山の管理者として境界の狭間に身を置く者たちの意思が、交錯します。
変わってしまった世界に、どう向き合うのか。異質な存在と、どんな形で共存するのか。誰がそれを主導するのか。
霧にかすむ山頂のように、未だ全貌を見せない境界の物語……心の奥の畏れ(おそれ)と共に、ぜひ、楽しんでいただきたいと思います。
今回は、読みはじめなのにレビューを書いてしまいました。
序盤から面白かったので紹介しておこうと思います。話が完結して、完読したらレビューを更新する予定です。
この執筆者の作品を多数よんできたが、今回は序盤から面白い。
きほん、説明文になりがちな序章の世界設定を、ストーリーの中にちりばめ、キャラクターが動きながら「ああ、なるほど。そういう世界なのか」と読者に伝える技術で退屈しない。序盤から没入感があるのに驚きました。
物語の「転換点」と「話の収束」で雑にならなければ、この作者の読後感は今までの作品からも良いことが分かっているので、星三つが期待できます。
作者じたいの成長を感じられる作品にであえた。読者として、これほど嬉しいことはありません。この作品は追っていきたい!!
追記!完読!!
この前、高速道路を車で走っていて、突然の雨。濃霧に包まれる山々が見えた。「氾濫か!」「山核化」なんて、作品の一場面が浮かび上がる。
「主人公が戦っているのかな?」なんて、想像させられるほど、自分のリアルな生活に「この作品」が根付いていることに気付かされた。
ふとした瞬間、実世界にファンタジーな楽しさを見出してくれる。これこそ、現代ファンタジーを読む、醍醐味。それを、十二分に感じさせてくれる作品でした!