第7話 雄也との時間



呼ばれてハッとなった。



「雄也...」



ゆり怖い顔してるよー、

怖いよー、老けてるよー


やたら大袈裟にガタガタと体を震わせながら雄也がゆってくる。



老けるは余計だなコイツ。





でも、我に返った。






私、いま何を思った?



綾子が心配そうにきいてくる。





「大丈夫?具合悪い?」






私、最低だ。


ちょっと保健室行ってくる、


と自分に腹が立ってその場から去った。



ウロウロして、いまは使われていない教室を見つけた。



机と椅子が乱雑に置いてある。



なんとなく1人になりたくて椅子に座り込む。



私、どうしちゃったのかな。



こんなにちっさい人間だったなんて。



振られたことも、柳君が綾子を好きなことも、何も知らない綾子のことも、


辛くて、人に見つからないように声を堪えて泣いた。



止まらなかった。苦しかった。



柳君。




綾子。





ガラガラ。


戸が開く音がした。


やばい!だれかきた!


と涙を止めようとしても止まらない。




「ゆり」


またしても雄也だった。



悲しそうな顔している。



「雄也か..これは別に..お腹痛くて」



「...うそ下手..」



なんなのコイツは。



しばらく無言が続いた。


雄也が切り出す。



「俺ね...実はみちゃったんだ。


ゆりが...柳に...」




マジかよ。




勢いに任せて告るもんじゃないなと後悔した。



「...振られたよ。見ての通り..」



うん。と雄也は私の隣に座った。


溜めてた思いがこぼれた。




「腹が立ったの、綾子に。柳君は他でもない綾子が好きで、綾子はそんなことも知らずに振られたねって言ってきて」



「...うん」



「綾子はなにも悪くない。なのに当たりそうなった。...嫌な奴だな私」



「...そうだね」



「あんた何しにきたのさ」



否定も慰めもしない雄也にガクッとなった。



「ゆり、辛い時は1人でいると良くないんだよ」


「...1人になりたい時だってある...」


「...それもそうか。いや、違うな。ゆり、それは違うよ」


俺の美学に反する!と説得力のない説得をされる。



「俺はね、ゆり。好きな人が辛い時はそばにいたい」



「...ん?」



今、なんかすごいこと言った?






「すごいこと言ったでしょ」


雄也が照れながら笑っている。




「俺はゆりが好きってこと。


これ、真剣と書いてマジだから。


ゆりには笑っていてほしいから。


1人で泣くとか俺が辛いから」



すごいことを急に言われると人間は何も言えなくなる。





























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春の夕 日永 ふらり @spaceinvader

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