テレパシー・ブロッカー
日和崎よしな(令和の凡夫)
テレパシー・ブロッカー
とある中学校にて、給食準備時間のこと。
教室の
「なになに、どうしたの?」
「
それを聞いては黙っていられない。今日のデザートは
ツーブロックヘアーにキメた、
髪をツンツンに逆立てて、タレ目気味な弟の
それぞれに自己主張の強い
多少の
二つの机を向かい合わせにしている
「給食開始の時間まで五分。一人一回まで。早いもの勝ちだよ」
兄の
まずは弟の
兄の
「この一枚のトランプを俺だけが見て、テレパシーで
兄の
そうして約五秒後。
「送った!」
「来た!」
兄の
「おぉーっ!」
感動して拍手する者もいた。
「はい! 俺やりたい!」
さっそく名乗りを上げたのは男子の
「オーケー。じゃあ始めるよ」
弟の
「俺は音で合図しているんじゃないかと思うんだよね」
兄の
それを受けて弟の
その間、
「ダイヤの11」
弟の
「おぉー、また合ってる」
周囲で
「あと三分だよー」
弟の
「道具を使ってもいいよな? それと、そのトランプ見せてもらっていいか?」
「もちろん、どちらもオーケーだよ」
兄の
しかしマークも数字もバラバラで、並びにも規則性はなかった。
「トランプ自体に細工はなさそうだな……」
「じゃあ始めるよ」
兄の
「待った。さっき言っていた道具だけど、これを使わせてもらうよ」
そう言って
「
「オーケー。じゃあ、始めるよ」
兄の
先ほどと同じ手順でテレパシーの送信まで終わり、弟の
さっきは顔を上げて宣言したが、今回はうつむいたままだし、正面に黒い
「ハートの2」
そして兄の
「残り二分」
「はい次、あたし!」
次に手を挙げたのは女子の
彼女はおもむろに制服のカーディガンを脱ぎだした。
「さっきの
これで正面も横も見えない。
「じゃあ、やるよ」
「あ、待って! シャッフルと一枚選ぶのは私がやってもいい?」
これなら兄の
兄の
「ストップ! その手を大きく開いて両面見せて」
手にトランプを隠し持っていて机の上のトランプとすり替える可能性を
兄の
その後、サービス精神なのか、右手の人差し指だけでトランプを机の
いままでどおり、黙ったまま五秒間ほど目を閉じる。
「送った!」
「来た!」
弟の
警察に連行される容疑者のような状態のまま、弟の
「クラブの10」
そして兄の
彼の後ろにいた
「さっぱり分からないわ。
弟の
カーディガンから自分の匂いがしないか確認しながら、人の輪の外へ出ていった。
もう
その中から聞こえてくる声は、テレパシー・トリックの
「残り一分。次で最後だね」
兄の
なかなか声を上げる者はいない。「最後」という言葉が重荷となっている。
最後のチャンスを使う責任は重大だ。
もちろん、
「あ、あの……。私、いいですか?」
そんな空気に
「もちろん。
兄の
「あ、はい。あの、
「お、おう」
兄の
弟の
「じゃあ、始めるよ」
兄の
兄の
兄の
彼女は黒い
一瞬、兄の
彼がいままでどおりトランプを机の
そうして約五秒後。
「送った」
「来た」
「スペードの3」
兄の
兄の
そこにあったのは――。
「ハートのエース‼」
ハートの1であった。弟の
「すごーい! どういうトリック? なんで分かったの⁉」
近くの女子が
「人が何かを知覚できるのは視覚、
「スート?」
誰かが
「あ、スートっていうのはマークのことです。あと、一枚のトランプはカードって言います。で、
「なるほど。で、
「そうです。
「でも、どうやって?」
また誰かが
もちろん、
「
「おおーっ!」
こうして、
「あなたたち、さっさと給食の準備をしなさい」
担任の先生が声を張り上げた。
テレパシーのトリックを説明しているうちに、給食の時間が押してしまっていた。
しかし先生に怒っている様子はない。
クラスの生徒たちは
―おわり―
テレパシー・ブロッカー 日和崎よしな(令和の凡夫) @ReiwaNoBonpu
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