Bからの電話
第3話 詐欺師の自首
数日後、詐欺師グループのアジトではAとBが大きな声で言い争っていた。
BはAに向かってこう言ったのです。
「何で、お前の口座には百万円が振り込まれていて、オレの口座には1円もふりこまれていないんだ!?」
Aは答えました。
「それ、オレも不思議に思っているんですよ。何でオレの口座にだけ、お金が振り込まれているのか理由が分からないんですよ」
「もしかして、あのおばあさん孫はいるけど、甥(おい)はいなかったとか・・・、男の子はいなくて、女の子ばかりだったとか・・・」
とBが言いました。Aは、それはおかしいという顔をして、続けました。
「それも変じゃないですか。オレのときも、孫だと言ったのに『いない』とは言わなかったし、Bのときも甥(おい)と言ったのに『いない』とは言わなかったですね」
しばらく沈黙が続いたあと
「でも、待てよ・・・」
とBは何か気が付いたように言いました。
「あの、おばあさん、オレの声が変だと言ったあと、『あなたはウソをついて私をだまそうとしたでしょう』とオレのことをみぬいていたなあ」
「それだったら、オレのときも『あなたはウソをついて私をだまそうとしていたでしょう』と同じことをいいましたよ」
とAも答えました。
「ということは、あのおばあさん、オレたちのことをオレオレ詐欺だと分かっていたということか!」
「な~るほど・・・」
と二人は言いかけて、顔を見合わせました。
「それだったら、二人ともお金が振り込まれなかったんじゃないですか?」
「そうか、Aには百万円ちゃんと口座に振り込まれていたんだからな。わからんな」
そして最後に二人が出した結論は、おばあさんが認知症になっていたから、Aにお金を振り込んだあと、Bに振り込むのを忘れたということでした。
ところが、【詐欺師のAが突然、警察に自首した】というニュースが流れたのです。
記事によると百万円をだまし取ったAは
「おばあさんが、『オレだけにお金を振り込んだ理由』が分かったので、自首した」と話しているとのことです。なお、Bも共犯として逮捕されたと書かれていました。
お金を振り込んだ理由は? 善野 オン @honntou
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。お金を振り込んだ理由は?の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます