お金を振り込んだ理由は?

善野 オン

第1話 Aからの電話

オレオレ詐欺という犯罪がある。電話をかけてきて、お金をだまし取るのだ。被害者はお年寄りが多い。一度に百万円から数千万円に上る多額のお金を銀行に振り込ませるのだ。お年寄りをねらった許せない犯罪だ。


今日も電話がかかってくる。

〈ルルルルル…ルルルルル・・・〉

「もしもし」

「あっ、おばあちゃん。オレだけど、分かる?」

「孫のAちゃんね。どうしたの?」

「あのさ、オレ昨日の電車の中に大事な書類が入ったカバンを忘れちゃって・・・」

「あら、それは大変ね」

「それで、明日の夜までに百万円用意しないと、会社をクビになっちゃうんだ」

「とりあえず、百万円でいいんだけど、何とかならないかな?」

「百万円なら何とかなるけど・・・」

「じゃあ、お願い。〇△×銀行の口座に振り込んで欲しいんだけど。助かるよ。よかった」

「・・・ところで、さっきから声が変なんだけど、風邪でも引いたのかい?」

「ゴホン、ゴホン・・・そうなんだよ、昨日から喉(のど)の調子が良くなくって、ごめんね」

「・・・」


おばあさんは、ここで変だなと気が付き、思い切って聞いてみました。

「あなた、孫のAじゃないでしょ。私をだましてお金を取ろうとして、ウソをついているんでしょ。そんなことをしちゃダメよ!」

男はしばらく黙っていたが

「はい、私はウソをつきです。百万円必要だというのはウソです。だから、お金を振り込んでください」

と言って電話を切った。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る