出会いと別れの狭間を肩を並べながら駆けていくさ

カクヨム甲子園2022 ロングストーリー部門
ポカリスェット賞おめでとうございます。


思い出す人も多いだろう。
新型コロナ対応に振り回され、辛い体験を乗り越えた様子が書かれている。
書き出しが良い。
本作は、主人公の心情からはじまっている。
主人公は、弱気になるけど真面目でがんばり屋として書かれているのがわかる。
人物描写は少ない。
描きたいのは、主人公が自己ベストを出すことと、ライバルの影野泉樺、コロナによる大会中止と一年後の開催についてだからだろう。

主人公は、母親の慰めを聞いて、飲み込んでしまっている。
高校一年とはいえ、まだ子供が通用する年齢。
「次なんてないんだ」と泣きじゃくってわがままを言っても良かった。
変わらない主人公を描くことで、世の中が変わったことを伝えたいから、この書き方をしたのかもしれない。

ラストの主人公の言葉は、実に現実味がある。
そんな出会いの場も、自粛や中止をされると断たれてしまう。
この先も本人たちとは関係ない力で、つながりが断たれないことを切に願う。