この光景を待ち望んでいた

千蘭

第1話 朝練がある日の登校は

 最近、練習量が増えた気がする。やっぱり大会前だからかな。学校までの道を歩きながらこれからの練習メニューを思い出し、私はうげぇと顔を顰めた。さっきより重くなった足を必死に動かしながら、いつのまにか目線の先に現れた学校を目指した。


 私が所属している陸上部の活動場所は、朝の冷たい空気がただようグランドだ。朝早くに起きて学校に来ただけでも褒められるべきことなのに……。夏と呼ばれる季節になったとはいえ、朝はまだ冷える。そんな中で走らないといけないなんて。思わずため息をつきかけた時、後ろから名前を呼ばれた。

れん!! 蓮!! 待ってぇ〜。一緒に行こ!!」

「はいはい。みやび、おはよう。」

「おはよう!」

子犬みたいに追いかけてきて、隣に並んだのはこの学校で一番仲が良い菊島きくしま雅だ。小動物みたいに小さくて可愛い。本人に言ったら、蓮が身長高いだけ!と怒られたから口には出さないけど。この時期は朝練がある部活が多くて、学校が近くなるにつれて生徒が増えてきた。


 そして門をくぐると、

「蓮ちゃ〜ん! 雅ちゃ〜ん! おはよ〜!! 陸部も朝練?!」

大声で呼ばれてしまった……。まだ屋外なんだけどな。返事しづらい。どうしよ。あ、

澪音みおのちゃんだ! おっはよー!」

雅、返事しちゃったか〜。しかも澪音に負けないくらいの大声で。そのまま駆け寄って行ってるし。しょうがないか。すでに引き止められないくらい遠くに行った雅を追って、私も走り始めた。

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