第2話 大会前のプレッシャー

 「全員着替えたか? 部活始めるぞ!!! 集合!」

部長の大きな掛け声で部員たちが集まっていく。流れに逆らうことなく私も部長の元へ集まった。


 「朝霞あさかすみ蓮! 良いタイムだぞ! このままいけば自己ベスト、更新できるんじゃないか?」

「あ、はい。ありがとうございます。」

突然コーチに名前を呼ばれて、何か悪いことをしたっけ? と考えていたらお褒めの言葉だった。咄嗟のことで反応が遅れ、そっけなくなってしまった。申し訳ない。

 確かに県大会が近いし、自己ベストは絶対に更新したい。8月下旬にある全中(全国大会)への参加は12.53秒以下が条件だ。私の今の自己ベストは12.55秒。このままじゃ全国に行けない。そんなのは嫌。ここはスポーツに力を入れている中高一貫校。しかし、練習は中学と高校で別れている。中3の先輩方が引退して高校の練習に行ってしまえば、今のようにのびのびと出来なくなってしまう。余裕があるうちに少しでも力をつけたい。そしてそれに伴う実績が欲しい。チャンスは今年だけ。焦りは禁物だと分かっていても、心に重くのしかかってくる。

 結局、朝練は足が上手く動かなくて、軽く走るだけで終わってしまった。


 もう7月中旬なのにタイムが伸びなくて、周りから「焦るなよ」って言われるくらいには焦ってた。どれだけ走る時のフォームを確認して練習に練習を重ねても、たった0.02秒が越えられない。みやびは長距離走の自己ベストを更新して、いいペースで調整に入っているのに私は……。

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