第3話 その明るさに救われてるよ

 「蓮。今日の朝、調子悪かった? 走りにくそうにしてたね。」

教室に行こうとしていたら、雅からそっと声をかけられた。

「よく見てるね。なんか焦っちゃって、上手く走れなかったの。」

雅はいつも、私の些細な変化に気づいて声をかけてくれる。いい友達を持ったなと思いながら、県大会について話していた。


 「怖いんだよね。もし全中に出られなかったら、とか色々考えちゃって。自分では必死に練習して、頑張ってるつもりなのに結果が出ない。その焦りがダメってわかってても焦らずにいられない。」

「そっか〜。蓮にもスランプってあるんだね。なんでもそつなくこなしてるイメージだった!」

雅から帰ってきたのはちょっと的外れな言葉だった。

「ふふっ。なにそれ。」

「えっ。私は真面目に答えてるんだよ〜?」


 「ん〜。とにかく! 蓮は考えすぎだよ! 私は蓮が一生懸命に走ってるのが好き! あ! なんのアドバイスにもなってないね! なにが言いたかったんだっけ?」

と、ちょっと悩んで言ってくれた。いつもそう。雅は「悩むことない」って言って、朗らかな笑顔で私の悩みを吹き飛ばしてくれる。

「そっか〜。ありがとう、雅。」

「なにが?」

「なんでもないよ。」

そうやってとぼけて、私に気を遣わせないようにしてくれるのも大好き。明るく振る舞って私を笑わせてくれる。そんな雅に何度救われたことか。感謝してもしきれないよ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る