第3話

キーンコーンカーンコーン


「ふぁぁ~」


がやがや・・・。


授業は終わり、終礼までの数分、教室は騒がしくなる。

友だちと騒いだり、放課後にどこかに行くみたいな予定を立てたりしている奴がほとんどだろう。

しかし、何事にも例外がある。



「(今日の晩御飯、何にしよう…)」


香威真琴。

この男には、友達と呼べる人は居ない。

別にいじめられているわけではない。

単純にぼっちなのである。


「おーい席につけ。終礼するぞ」


このクラスの担任がやって来た。

基本的には連絡事項をこの時間に言うのだが、大したことは無いのが普通だ。


「連絡事項は特にはないです。それじゃあ号令」


「起立。礼」

「「「「「ありがとうございました」」」」」


終礼はすぐに終わり、皆それぞれの場所へ向かう。

部活に向かう人や家に帰る人。

どこかに遊びに行く人や寄り道して帰る人。

かく言う香威真琴も寄り道をして帰る。




ピコン。

チャットアプリの通知がなる。

香威真琴のスマホからその音はなる。


「(有栖からか?)」


友達が居ないという事は、チャットアプリの連絡先の交換する人も居ないという事だ。

登録されているのは、両親と麦野有栖のみである。


『今日は真琴の中華が食べたいな♡』


晩御飯のリクエストのようだ。


「了解です。っと」


返信をし、材料を買いに向かう。









「せっかくここまで来たから、買い物の他にもぶらつくか」


大型商業施設に来ているので、食料品以外にも、他の店も見てみることにした。


「(あっポップコーン屋さんだ。買って行こ)」


「(あっモンブランだ。買って行こ)」


「(あっシュークリームだ。買って行こ)」


今日の晩御飯の材料と共にいろんなものを買い込み、帰路に就く。






「よしっ。とりあえず餃子でも包むか」


帰宅して早々、晩御飯の準備に取り掛かる。


『にゃー』


料理する時は、必ず猫の動画を見ながら行う。

癒されながら料理をする事が香威真琴の日課である。


「モフモフだなぁ」

『にゃー』

「にゃー」





餃子を包み終え、他の料理を先に作る。


「あとは、麻婆豆腐と春雨サラダでも作るか。炒飯は有栖が帰って来てからで良いか」


そうして他の調理も始める。





今の時刻は20時。

麦野有栖の定時退勤の時間となっていた。

晩御飯の準備を終え、後は餃子を焼くことと炒飯を作るだけとなっている。


「課題をさっさと終わらせるか」


本日、出された課題に取り掛かる。

出されている課題は、古典と数学となっている。


「今日は源氏物語か。まぁ古典は得意だし口語訳にさっさと直しますか」


古典は、かなり得意であり、学年4位となっている。

学年のトップ3はかなりレベルが高い。

トップ3は他の教科でも上位を占めている。


「えっと…。『いづれの御時にか…』ってあれか。いつの天皇の時代だったでしょうか。みたいな感じか?」


そうして、黙々と課題を終わらせる。





ガチャ…。

「ただいま~」

「おかえり有栖」


ぎゅぅぅぅ…


麦野有栖は帰って来て早々に、香威真琴に抱き着く。


「疲れたぁ」

「おかえりなさい。ご飯にします?それともお風呂にしますか?」

「はっ!これが伝説の質問なのね!!」

「はいはい。そうですね。それでどうしますか?先にお風呂入って来たらどうですか?」

「あれ?誘導されてない?というか、真琴って選択肢ないの?」

「俺が良いんですか?」

「んー。それもありだけど、先に身体を洗いたいな」

「はいはい。ではいってらっしゃい」


麦野有栖は、お風呂に向かい、香威真琴は、料理の仕上げに取り掛かる。







ピチャン…。


「ふぅ~。気持ちいい~」


麦野有栖は、仕事の疲れを癒すかのように湯船に浸かる。


「というか真琴に任せっきりだなぁ。何かしてあげたいな…」


彼女は、仕事のせいとはいえ、任せっきりにしてしまう事を常に思ってしまっている。

さらには、教師と生徒という関係であるため近場でデートもできない。


ブクブク…。


「(今度の休日にどこかに誘ってみようかな…)」







「上がったよー」

「お疲れ。こっちもご飯の準備は終わったよ」

「ありがとうね」

「いえいえ」


2人はいつものように席に着き夕食を食べ始める。


「ねぇ真琴」

「ん?」

「今週末デートしない?」

「デートですか?」

「うん。でも近場だと知り合いがいるかもだから、ちょっと遠出しよ」

「良いですけど、どこか行きたい場所あります?」

「んー。いつも真琴にお世話になってるから決めて良いよ」

「それはお互い様ですから。でもそうですね…。行きたいところですか」


香威真琴は、考える。

何だかんだで初めてのデートとなるため、しっかりとプランを立てないとと思っていた。


「でも、そっか。私、デートって初めてかも」

「それは、俺もなんですけど」


お互い、恋愛経験なんてないからデートスポットなどというものは知らない。


「じゃあ俺、あそこ行きたいです」

「どこ~?」

「水族館です」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

禁断の恋?いえ、バレなかったら問題ないです。 MiYu @MiYu517

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ