Ep.16 いつだって、リセットの引き金を引く準備はできてる
すごく悲しいことがあった。気がする。
でもそれで良かったともおもう、わたしがいる。
ゲーミングチェアに座って、足をぶらぶらとさせながらモニター画面に向かう。よくあることだけど、今日もまたどうやって家に帰りついたのか記憶はなかった。
そしてまた痴漢にやられたってことはわかる。
「でねー。気づいたらボタン引きちぎられちゃっててさ~。いやーこまっちゃうよねぇ~、べつにシたいんだったらシてもいいんだけど」
――えー、じゃあ俺も痴漢しにいこうかなー
――デパスちゃんってほんと地雷系って感じだよね。でも俺そういう子大好き
ネット上でのわたしは『デパスちゃん』、わたしの愛する
それくらい、わたしはダメな子だ。ダメで、まさに地雷な女の子だ。
――その割には今日ちょっと目赤くない?
チャットの文字に、そんな一言を見て、一瞬思考が止まった。
まるで、悲しいおとぎ話を読み終わったあとの読後感のような、そんなどこか甘くて寂しい気持ちに似たなにか
それがわたしを満たしていることに気づいたから。
「いっぱい、寝たからね!」
適当な理由付け。
なんとなくの言葉に意味はないけど、意味がないコミュニケーションは好き。
電源ボタン一つで消せる関係性は楽で、人生もそんな感じにリセットできればいいのにってずっと思ってる。
『蜜柑ッ……蜜柑ッ! 俺、おまえが好きだ……もう、離さない……離したくない!』
あれ、わたし今日やっぱり誰かと話したのかもしれない。
夢じゃなくて、たしかにそんな会話をしたような……してないような。
ううん、多分した。
フラッシュバックした夕日のなかに、たしかに彼がいた。
「あ、そっか……」
『……じゃあ、寝てるときは、俺の好きにするけど。いいんだな』
なにかを諦めたような彼の表情は、どこかモニターに映る、わたしの表情に似ていた。
ちょっと目赤くない? なんて、あのときの彼に言ったら、彼はどういった言い訳をしただろうねって、ちょっと気になった。
だから明日は、少しだけ多く話をしてみよう。
いつだって、リセットの引き金を引く準備はできてるから。
地雷系女子との最上級に甘い恋のはじめ方~まずは付き合ってみよ? 3日間、お試しで!~ 甘夏 @labor_crow
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。地雷系女子との最上級に甘い恋のはじめ方~まずは付き合ってみよ? 3日間、お試しで!~の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます