この物語の主人公、朝から慌ただしい時間を過ごしてきた。
自身がちょっと寝坊した時に限って、娘もなかなか起きず、息子はご機嫌斜めで服を着せてくれと駄々をこねる。
そんなバタバタの所為で、娘に傘を持たせるのを忘れてしまう。
雨は憂鬱と思っていた主人公に、職場の先輩から、素敵な一言が……。雨の日だからこそ見える、子どもたちの違った一面があるのだと言う。
息子のお迎えを済ませ、娘を迎えに行こうと、普段は車で向かうのだが、この日は傘を手に取った。
雨の中、子どもたちが見せる子どもごころが、この物語を読む者のこころを暖かくしてくれるかもしれない。
お母さんは、ちょっとだけ置き去りにしてきてしまった、子どもへの愛情を取り戻せるかもしれない。
こころ暖まる物語……って、こういうことなのだと思う。
わたしは、この子どもたちが、ちょっとだけ羨ましいと思えた。
主人公は主婦の「私」。一人称で語られます。
その日は予報が雨だったにも拘わらず、小学1年生の娘に傘を持たせるのを忘れてしまいます。車で迎えに行こうと思いますが、昔祖母が傘を持って迎えに来てくれたことを思い出し、小さな息子と一緒に歩いて行くことにするのです。
憂鬱になりがちな雨の日ですが、子どもたちにとって、その世界はきれいなものや興味が沸くもので溢れています。その様子を見ていた「私」は、大人になって忘れていた雨の日には素敵な景色があったことを、思い出すのです。
また、傘を持って迎えに来てくれた祖母との思い出も、この作品の中では重要な意味があります。読めばきっと、「ちょっと大変だな」とか、「ちょっと辛いな」と思う気持ちに、雨上がりの空のような光を差し込んでくれることでしょう。
雨の日の優しいお話。気になる方は読んでみてはいかがでしょうか。