未定
ちとせあめ
第一話
春風が桜を脅かす、躍る春。
少女は疾走る。遠く、遠く、どこまでも。
正しくは、その力が尽きるまで。
息苦しくて、痛くて、苦しくて。
風を切る音だけが心地よくて、それなのに、
苦しくて、苦しくて。
少女はひたすらに、疾走った。
はっと我に返ると、林の中。
そこにあったのは小さな植物園。
手をのばして扉を引く。
真っ白なカッターシャツを靡かせる、
月夜が瞳に映って、まるで、万華鏡。
彼女の瞳を捕らえて、離さなかった。
花々が、絵の具を広げたキャンパスのように、
美しくて、少女は、ただ、無性に駆られた。
肩を突き飛ばして、押し倒した。
『君を、汚したい。』
未定 ちとせあめ @candy_1006
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