RainyDays or

フィンディル

 外は雨が降っている。殺風景な部屋の端には本棚が置かれている。中央に置かれた机を、長髪の男と短髪の女が座って囲んでいる。「雨ね」「そうだな」

 雨音が部屋に響いている。木でできた本棚と木でできた机に響いている。長い髪の男性と短い髪の女性がそれぞれ揺れた。「降るね」「いいじゃないか」

 雨に包まれた部屋の中、本を収めた本棚と若者を囲ませた机がある。男へ女が、少しばかりの破顔で声を投げかける。「雨でもいい?」「ああ、いいな」

 雨の空の下、小さな家が建っている。その一室、狭い部屋にはいずれも古い本棚と机が置かれているのみ。男女が一組。「何を見ているの?」「外の雨」

 雨はしとしとと降るばかりで、厚い雲が消える兆しは見えない。部屋は書斎のようで、本棚と机、また男女がいる。「降ってるねー雨」「降ってるなあ」

 雨は一定のリズムを刻む。部屋も本棚も机も、逆らわずに沈黙を保っている。男が溜息を吐くと、女は声を出した。「雨だもんねえ」「ああ、悪かった」

 降る雨と、打たれ続ける部屋の、本棚と机。男が話しかけられる。アンニュイな雰囲気を持つ短髪の少女だった。「雨、止まない」「止みそうではない」

 雨が降る。狭い部屋、本棚や机がくすんだ色に沈んでいる。背の高い男と低い女が向かいあって座っている。「晴れて欲しい?」「どちらでもいいかな」

 雨のひんやりとした風が、部屋の窓に当たっている。本が詰めこまれた本棚が無骨に立っている。小さな机に、男女が向かっている。「寒い」「雨がな」

 雨は降る。電灯のない暗く狭い部屋の中。大きな本棚と小さな机があり、誰だろうか男女が二人いる。何かしらの話をしている。「そう、雨が」「……」

 雨が雫を落とし続けている。薄暗い部屋には、本棚と机がひとつずつある。若い男女が、小さな声で何か話している。「雨じゃなかったらな」「だなあ」

 雨脚は衰えることなく、灰色の部屋は更に濃さを増していく。本棚や机も底に沈んだかのよう。空気を吸いこみ、男と女が話す。「雨強いね」「……雨」

 雨で遠くの山は見えない。光源のない部屋は、すっぽりと暗さに包まれている。本棚と机、そして男と女が小さくいた。「雨が降ってるね」「……だな」

 空は雨。ひっそりとした部屋には、経年を感じさせる本棚と机がある。住人と思しき二人の男女が何度目かのやりとりをする。「雨だねぇ」「雨だなぁ」

 柔らかな雨が、暗い部屋の窓の向こうに見える。本棚。机。長い髪を揺らす男と、髪を短く切り揃えた女がいる。「雨……雨だねえ」「落ち着く雨だな」

 雨粒が屋根に跳ねる。その部屋は暗い。本棚と机がそれぞれ置かれている。傍に男と女がいる。気だるげに言葉をやりとりしている。「雨だ」「雨だな」

 雨が湿った空気を運んでくる。部屋はじめじめとしており、本棚や机は黒みがかっている。不愉快そうに、男女が話している。「雨って嫌」「同感だな」

 雨音が間断なく鳴り響いている。壁で仕切った部屋のなかは、かえって静寂に満ちている。本棚、机もしんとしている。そこに男女の声。「ねえ」「ん」

 雨に打たれる部屋。打たれていない本棚と机も、どこか頭を抑えつけられているよう。男と女が会話をしている。「雨の音がしている」「降っているな」

 降り続ける雨。四角い部屋にあるのは、本がぎっしり詰まった本棚と小さな机のみ。そして視線を交わす一組の男女。「今日は雨が降ってるね」「ああ」

 雨の空。雫は止め処なく、雲はどこまでも厚い。ひっそりと佇む部屋は、その中に本棚と机、そして男女を抱えている。「雨で良いかも」「そうかもな」

 今日は雨。部屋の本棚、机は雨に浸かりきっているように佇んでいる。男の前に座っている女が、大きな溜息を吐いた。「じめっとしちゃう」「まあな」

 雨の粒が小気味良く屋根を叩く。他に音のない部屋に、重厚な本棚がひとつ。机を囲んで男女が一言ずつ発した。「あなたは雨好き?」「嫌いじゃない」

 雨の部屋。本棚の蔵書はどれも背表紙に文字がない。意匠の施されていない木製の机を挟んで見つめあう男女がいた。「雨だね」「そうだなあ……うん」

 雨は帳となり、部屋を世界から隔絶する。本棚、そして机。鋭い視線を飛ばして男は息を吐いた。女も息を吐く。「どうかした?」「どうもしていない」

 雨が降っている。小さな部屋がある。端に本棚がある。中央に机がある。机の周りに男と女がいて、話しだす。「雨が降っているよ」「わかっているよ」

 雨水が小川を作り、部屋の傍を流れている。端の本棚、中央の机はじっとしているばかり。男女の嘆息が聞こえる。「雨って、寂しい」「同じ気持ちだ」

 雨の部屋に本棚が置かれ、机が置かれている。灯りのない暗がり。しかし無人ではなく、一組の男女が確認できる。「雨ってさ」「雨がどうかしたか?」

 雨の飛沫が部屋に当たり、リズムを奏でる。本棚と机は無音でじっと立つ。男は咳払い、女は口を開いた。「雨だから肌寒いね」「温かくしないとなあ」

 雨で生まれた水溜まり達が部屋の窓から確認できる。埃が積もった本棚と脚の細い机を、男が見ている。その様子に女が気づく。「どうした?」「いや」

 雨が降る低い空の下、この家は建っている。その一室、狭い部屋を大きな本棚、また机が更に狭くしている。ある男女がいる。「雨、雨」「ああ、雨雨」

 雨、部屋、本棚、机。長髪の男が物憂げに窓の外を見ている。力のない瞼の開きから、心を読むことはできない。女が話しかけた。「雨ねえ」「……ん」

 雨に冷やされた空気が、窓を貫いて部屋の温度を下げる。古めかしい本棚と頼りない机。やや厚着の男女の話し声がかすかに聞こえる。「ふう」「ん?」

 空間を埋め尽くすように雨は降っている。部屋にぽつんと置かれた本棚と机。そして男が一人、女も一人存在している。「ザーって雨が」「雨の音がな」

 雨雲が覆っている。この部屋に灯りはなく、本棚も机も寂しげにある。押し黙っている男に対して、女が唇を動かした。「雨も良いよね」「ん? ああ」

 雨を見るばかり。味気ない部屋に目を惹く物はない。古い本棚と茶色の机。男と女が、手持ち無沙汰に声を出しあう。「あー雨ね」「んー、だな雨だな」

 降る雨。部屋には本棚と机が置かれている。長髪の男が細い目を更に尖らせて前を見つめている。丸い目をした短髪の女が呟く。「雨だけど」「わかる」

 雨はすぐには止みそうにない。灯りのついていない部屋に本棚と机がうっすら確認できる。男女が言葉を交わした。「降ってるよね、雨」「降ってるな」

 本当に雨雲の先に太陽があるのか疑われる日。部屋も、本棚も机も、物を言わずに黙っている。静寂を破って男を女が呼ぶ。「ああ、雨ね?」「そうだ」

 雨に耐えるように部屋はあった。本棚と机は暗い。椅子に腰掛けている男女は、いずれも外を一瞥し言葉を投げる。「こう雨だとね」「悪くはないけど」

 冷たい雨が降る。小さくて暗い部屋には、古びた本棚と机がぽつり。沈んだ空気のなか、男性と女性がぼそぼそと喋っている。「雨……」「雨だな……」

 くすんだ雨に、部屋は静まりかえっている。本棚と机が重々しく置かれている。男と女が椅子に座り、何度目かのやりとりをする。「やっぱり」「雨か」

 雨に煙っている外が、部屋の窓から見える。本棚や机がどこかしっとりと落ち着いている。しかし男と女は違った。「何か嫌にならない?」「まあまあ」

 雨は強く打ちつけるが、部屋は漏らない。本棚は本を隠し、机は足を隠す。男は穏やかな視線を向け、女は応える。「どうしたの?」「いいや、何でも」

 雨。暗がりに取り残されたような狭い部屋に、本棚と机が設置されている。椅子には男性と女性がそれぞれ座っている。「雨ってどこから?」「さあな」

 雨の日には外に出ずに部屋で、本棚から本を探す。そして椅子に座って机に向かう。男女で顔つきあわせていれば話をする。「止まないね」「まあなあ」

 窓から見えるのは、雨が降る外。部屋には本棚と机が置かれているだけで、そこにいる男と女の表情は動かない。「雨で気持ちもブルー」「そう思うか」

 外は雨空、だがそれを見上げる者はいない。小さな部屋の中で、本棚や机を見つめてその時を凌ぐだけだ。男と女もそう。「雨で仕方ない」「どした?」

 雨が止め処なく降る。とん、とん、と屋根を打つ水音が部屋に鳴っている。本棚と机があるそこに、男性女性それぞれがいた。「雨よねえ」「……うん」

 雨が降り続けている。部屋の本棚には様々な本が立てられており、傍には机がある。椅子に座っている男女の、片方が言葉を発する。「雨」「降ってる」

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