こちょこちょ




「はー、美味かった。もう腹いっぱい。ごちそうさま!」


「ごちそうさまでした!えへへ、どういたしまして」


今日は休日。朝ご飯を食べ終わり、俺は後片付けをしていた。里奈は「私も手伝うから!」と言ってくれたが、


「里奈のせっかくの綺麗な手を洗剤で荒らしたくない。せっかく美味しい朝ご飯を作ってもらったんだから、ちょっとくらいお返しさせてくれ!」


「…もう…あっくん…そこまで言うなら…うん、分かった。ありがとう…」


俺はキッチンカウンターから里奈を見つめながら片付けたいのだ。一緒に片付けるのはもちろん嬉しいが、本能に負けて、里奈に手を出してしまいそうだ。朝から俺は狼になりたくない。

そう思いながら、皿やフライパンを水を張った銀色の桶に入れる。フライパンのオリーブオイルの残りはキッチンペーパーで吸い、皿はスポンジに洗剤につけて洗う。洗剤を冷水で流し、乾いたふきんで皿をサッと拭くと、食器棚にしまった。


俺がテーブルを拭き終わると、ソファに座って待っていた里奈が、


「あっくん、今日は中華街に行こうよっ!」


里奈は、はしゃぎながらスマホでポチポチ検索中だった。

あぁ、可愛いな…最高の癒し…


「いいな、中華街、行くか」


「やった!」


リビングには、3人掛けの紺色のソファがある。里奈は真ん中に座っている。俺はキッチンに戻り、ふきんを温水で洗うと、短い廊下にある洗面所へ向かう。手を洗うと、里奈のいるソファに向かった。

拳一つ開けて、里奈の横に座る。これが俺の理性的距離の限界だ。しかし、今すぐ抱き締めたい…嗅ぎたい…触れたい…もうデートは家で良くないか?人目にはばかられず、里奈を心ゆくまで堪能したい。いやダメだろ、今日は外でデートなんだ!しっかりしろ、俺!

両頬をパンッと叩いた。


「あっくん、朝ご飯食べたばかりなのに、まだ眠いのかな??しょうがないな~私が起こしてあげる」


里奈が俺の方をパッと向く。

そんな可愛い顔で見つめるな。照れるだろ…

里奈は俺がまだ目覚めが悪いと思ったらしい。里奈は距離を詰め、ピタッとくっつく。俺の理性的距離が…0に…

そして、甘やかな顔を近づける。

すると突然、俺の脇に手を突っ込んだ。


「こ~ちょこちょこちょこちょ~こちょこちょこちょ~!!」


「あはははははははは~~~!!やめろ、くすぐったいって~」


俺も負けじと、里奈の脇をこちょこちょする。指先に柔らかい胸が時々当たる。


「あはははははははっも~くすぐったいってば~こちょこちょすれば、あっくん目覚めるかなってっあっはははははははは」


「そうかそうか、ありがとな。じゃあ俺も里奈に何かお返ししないとな~」


里奈が「お返し?」と、コテッと傾げる。

これは反則だろ…

俺は里奈の左腕を里奈の背中に回し、身体を密着させる。服越しで里奈の体温が伝わる。

あぁ、里奈の体温…温かい…

顎を持ち上げ、里奈の甘い唇をついばむ。


「んっ、んんっはぁっんんっ」


いきなりのことに、初め里奈は肩をすくめていたが、次第に緊張が解けた。細く柔らかな腕を背中に回し、俺のシャツをギュッと掴む。俺はぎゅうぎゅうに抱き締め、ふわふわな胸が硬い胸で潰れる。

里奈の身体はどこも柔らかいな…

密着度が増すにつれ、里奈の甘い甘い香りが鼻腔を埋める。キスは次第に深くなり、俺は里奈の舌を絡め取る。呼吸が出来ないくらい深く深く…


「ん…ん…はぁむ…んん…っはぁん」


いつまでこうしていたのだろうか。俺は抱き締めをちょっと緩め、里奈の唇から離れた。里奈は顔を紅潮させ、恥ずかしそうに目を潤ませる。


「もう……朝から激しいってば…」


「ごめんごめん、でも里奈があまりにも可愛い過ぎるから、止められなかった…」


「っっ?!…そんなこと……」


モジモジの里奈、たまらん…

俺はもう一度、里奈をぎゅっと抱き締めた。


「もうちょっと、こうしてていいか」


「ん…いいよ」


俺は里奈を膝抱っこして、里奈の頭を優しく撫でる。里奈が俺のシャツをキュッと掴み、おでこを俺の首元に擦り付ける。里奈の艶髪にキスを落とす。


あぁ…幸せ…


それから俺と里奈は、しばらく身体を密着させたまま午前中を過ごした。


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日課 ニャン太郎 @kk170215

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