永遠の物語

 読み終わった後私は、とてつもなく心地の良い読了感に包まれた。もう一度最初を読み返して、そのまままた終わりまで走ってしまいそうで、慌てて閉じた。


Hanashima!!、題名にもなっているそれは、主人公たちの住む県の名前だ。
ある少女、玲香がパソコンを扱うところからこの物語は始まる。それは学校の課題をする、なんて生ぬるいものではなく、「夜桜屋」。違法情報を交換するサイトの運営をしているのだ。
 そしてその「夜桜屋」は、彼女が同棲している菜々と行っているビジネスであった。
 それから彼女たちは、TwinというSNSで仲良くなっている人たちがいた。そして彼女は、その人たちといわゆる「オフ会」をすることに決まる。

 冒頭で私は肝を抜かれた。中学生が、何でもない調子で違法なことを行っている。しかも小学生の時から。おまけに仕事上のパートナーと同棲と来た。仕事の話と二人のほほえましい様子の会話が同時に展開される。このギャップが良かった。
 そしてオフ会。会話内で「同じ県に住んでいる」とわかったからこそ行われたこと。……しかしのちにこれが多大な恐怖に繋がるのだが、それは別の話。


 この作品では、登場人物が皆どこか狂った、異常な、おかしなところがある、というのがじわじわとわかってくる過程がすごく恐ろしかった。
 例えば優雅。彼は周りと自分を比べ、「自分だけはまともでいなければ」とは思いつつも、結局は彼にもどこか異常なところがある。その描かれ方が見事だった。見事だったからこそ怖かった。

 私は最初、この物語のメインの主人公は玲香なのだと思っていた。それは最初の語りが玲香によってされていた、というのが大きいのだが、読んでいくうちに、それは間違いなのだと思った。
 この物語の主人公は、菜々だ。そして菜々と玲香の二人だ。
 とにかく菜々が強かった。何が何でも玲香と「夜桜屋」を守りたい。それでいて、オフ会のメンバーも守りたい。そのために菜々はある決断をする。その強欲でしかし強い決断が、この作品の全てを物語っている。

 これは永遠に終わらない物語なのだ。

 一点思うところがあるとすれば、いわゆる「百合の間に挟まる男」が苦手な人にはお勧めは出来ないかもしれない。だが読み終わった後に押し出されたため息は、きっと感嘆から出るものだ。私には上手く説明が出来ないため、この感覚はぜひ自分で読んで確かめてほしい。

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 本当に面白かったです……!! 素敵な作品をありがとうございました。