短編において、危惧される問題の一つに、物語の薄さがある。もちろん短編なのだから文字数が少なくて当たり前で、重要なのはその限られた枠の中でどれだけ美しい文字を埋めるか、というのは、文章を理解する人ならば簡単に理解してもらえるだろう。
さてこの作品はというと、その狭い枠を存分に使い、時間的な濃密さを文字にて十全に表している。
流すところはクドくない程度にけれど不必要な文なんて無くて、文の重要度を理解し取捨選択し、物語の佳境、クライマックスのオチは登場人物の、数分にも満たない劇的な展開をしっかりと描写している。
なんとも緩急が美しい作品。
駄文も冗長さも、ここには無い。
物語の時間性をしっかりと描写していることもそうだが、もちろん二人の登場人物へ焦点の当て方も鮮やか、綺麗過ぎる。
起承転結に則った芸術的な文章構成。
お見事。