第6話 魔王城跡地再生計画
建築士ゾーハは先先々代魔王の代から仕える伝説の職人であり、その高い技術力により魔王が代替わりした後もその立場を約束されているのである。
歴代魔王達が自身の力を誇示する為に魔王となってまず最初にすることは、新しい魔王城を作ることである。
それゆえに魔大陸各地には歴代魔王達が作った魔王城の遺跡が存在する。
「歴代の魔王城跡地をダンジョンに再利用すると?」
「はいその通りでございます魔王様、そしてその建築に際しグラキエス様のお力添えが必要なのです」
「グラキエスの……つまり氷を使ったダンジョンということか」
「お察しの通りでございます」
グラキエスはジョンの背後で魔王から目を逸らし、どことなく気まずそうにしていた。
「グラキエスが部屋に閉じこもるようになってもう10年か。久々に顔を出したかと思えばダンジョン建設に協力するとは、どういう風の吹き回しなのだ?」
「さあ……私も彼の勢いに乗せられたと言いますか……」
そう言ってグラキエスは肩をすくめた。
「それで、ダンジョンにする魔王城跡地の選定は済んでおるのか?」
「はい、既に済んでおります。魔大陸最大の山、アストルム山に建てられた魔王テンペスタの城でございます」
ジョンはフェルデンから受け取った魔大陸の地図を広げ山脈の場所を指さした。
「魔王テンペスタ……先々代の魔王で天候を自在に操る魔法を使ったというあのテンペスタか。魔王城の周囲は常に大嵐で近づくことすら困難だったと聞く。確かあの城を作ったのもゾーハであったな」
「はい、それも選定理由の一つでございます」
「では早急に作業にあたれ。必要な物資があればフェルデンに伝えれば用意してもらえるだろう」
「かしこまりました。必ずや魔王様のお眼鏡にかなうダンジョンを作ってみせましょう!」
そう言ってジョンはゾーハと打ち合わせをする為その場を後にした。
残されたグラキエスは魔王に何かを言いかけたが、結局何も言えずジョンの後を追った。
魔王はそのグラキエスの背をただ静かに見つめていた。
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