第5話 氷のグラキエス
魔王の次女ラーミナは人間達の間では首狩りラーミナと呼ばれている。
彼女はより強い相手と戦うことが好きだった。
それゆえに弱すぎる人間を狩ることは彼女にとって暇つぶし程度の価値しかなかった。
(ラーミナ様から聞いた他の兄弟姉妹の話は実に興味深い……特にラーミナ様と仲が悪いという次男のグラキエス様、一度会ってみたいところですね)
ラーミナと別れたあとジョンは魔王の元へと向かう為、廊下を一人歩いていた。
「それにしてもやけに冷える……」
通路の所々が凍りついており、進めば進むほどさらに空気が冷たくなってゆく。
「……この先に誰かいるのか?」
冷気はさらに激しくなりやがて吹雪へと変わる。
足取りはどんどん重くなり、やがて足は凍りつき意識が朦朧とし始めた。
「これは、まずいですね……」
薄れゆく意識の中、完全に凍りつく前にジョンはナイフを取り出し全身を切りつけた。
傷口から燃え上がる青い炎が氷を溶かしてゆく。
(足はもう切り落とした方が早いか……)
ナイフを足に勢いよく突き立てようとしたその時、誰かがジョンの手を掴んで止めた。
「すまない……。見知らぬ人物がいたので少々警戒した……」
いつの間にか吹雪は収まり凍りついていた通路も徐々に溶け出していた。
「わ、私はダンジョン建設特別顧問のジョン・ダンジョルノと申します」
「私の名はグラキエス……氷のグラキエスだ」
宝石のような蒼い角に白銀の頭髪、透きとおった白い肌、ラーミナとは真逆と言える容姿だがその瞳だけは彼女と同じ金色だった。
「あなたがグラキエス様、では先程の吹雪もあなたが?」
「あぁ……私は生まれつき冷気を操ることができるのでね……。ただ時折力が暴走して辺り構わず凍らせてしまうことがあるので、普段は魔王城の自分の部屋に篭っているのだが……」
ジョンはグラキエスの話を聞いてふと何かを考え始めた。
「どうか、したのか?」
「……グラキエス様、たった今私の中に新たなダンジョンのイメージが舞い降りてきました。そう、それは氷の迷宮!」
「氷の迷宮?」
「はい。そしてこのダンジョン建設にはグラキエス様のお力添えが必要なのです」
話についてこれず呆然としているグラキエスの手を取りジョンは満面の笑みを浮かべた。
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