読み書きに、会話もできない、怪獣が、人に惚れたら、こうもなるかな。

水白 建人

 

まちおそったガオガオライノスさいのこりめ、かくれてないでてこい!」

 ガ、ガガオッガーガオガ……!

「うわあ!? かいじゅう!?」

「ガオッガ!?」

たすけて70%ななじゅっパーマン!」

きゅうななわりはぼくがまもる! しゅつりょく70パーセントのレーザーこうせんらえ!」

「ああ、ねらいがれて――」

でんちゅうバキバキー」

「おばあさんげてー!」

 ガオガァ!

「こ、こんかいじゅうでんちゅうなぐばした!?」

でんせんビリビリー」

「ガオガガガガ……!?」

「ああ、こんなさきみじかいばあさんなんかのために……」

「オガガァ! ガオ、ガオ――」

「ありがとう、ありがとうよ」

 ガ、ガオガ……ガオガガオ……?

 ガオ、ガオガーガオガ、ガオガガッガオガ!?

「そこのおばあさん、あなたはきゅうななわりだ」

「ガガオッガーガオ――!」

「ガオガオライノスよ、おばあさんからはなれろ! ひゃくぶんななじゅうキーック!」

「オガァーーーー……!」


きゅうグルグルー」


「……ガ、ガガガ……」

 ガガオッガーガオガ! ガガガオ、ガオガオガオガオガ、ガガガオガオガオガガッガ……。

 ガガ、ガオガ……。

『ああ、こんなさきみじかいばあさんなんかのために……』

「……ガーガオ」

『ありがとう、ありがとうよ』

 ガ、ガオガ! ガオガ、ガガオ、ガーガオガガガオ、ガッガガオガガオ。

 ガッガガオガガオ、ガ――。

「そよかぜサワサワー」

はなびらヒラヒラー」

 ガオガガオ、ガオガオ、ガガオガッガ。

 ガオガガオガ、ガオガオガッガ。

「……ガーガオ」

せつめいしよう。にんげんのおばあさんからまれてはじめて「がお」というものをもらい、ガオガオライノスはかのじょこいをしてしまったのである》

《そんなガオガオライノスだが、しんちょうはおよそ170センチ、たいじゅうは150キロちょうほんあしあるはいいろどくしんかいじゅうである》


きゅうグルグルー」


あさキラキラー」

「すずめチュンチュン」

「あら、あんたこのあいだの」

「……ガーガオ」

「ふう、いのちおんじんに、こんなこといたくないんだけどねえ」

「ほうきカサカサー」

「ここらへんは、パーマがなんとかっておにいさんがまわりしてるから、ないほうがいいよ」

「ガ、ガオガ! ガオガ、ガオガオガッガオ、ガガガオガ」

「え? なんだって?」

「ガオガガオガガガオ! ガオガオガガオガ!」

「がおがおだけじゃ、わかんないよ。ふう」

「……ガオ?」

「さて、つぎにわくさむしりでもするかねえ」

「ガ、ガオ! ガガオ、ガーガオ!」

 ガオ、ガオガガガガ、ガガッガオガ。

 ……ガオガ。ガガガオガ、ガガガオガオ、ガオガオ。

 ガオガガオガオ?

せつめいしよう。おばあさんにことつうじないとづいたガオガオライノスは、ぶんちをプレゼントでわかってもらおうとかんがえたのである》

《ちなみに、ガオガオライノスのきゅうあいこうどうは、そらかっておおきなほのおいてみせることである。なぜやってないのかって? とってもシャイで、なおじゃなかったからである》


きゅうグルグルー」


 オガガオ。ガッガ、オガガオガ。

「ガーガオ」

「おや、ガーちゃんじゃないの」

「ガ、ガオ」

りょうはななんかって、ふう、どうしたんだい?」

「ンガ」

「まあ、べちゃった。え? もういちりんはわたしにくれるのかい?」

 ガオガガオ、ガッガオガオガオ。

 ガガオガガガオガガ。ガッガ、オガッガオガガガオガ。

「あらこれ……ふう、ガーちゃんったらものりねえ。このおはなやくそうになるってわかってるんだろう?」

 ガ、ガオガ……?

「わたしがちいさいころには、かんそうさせていためにしてたんだよ。ふう、こうのおかにはいまでもいてるんだねえ」

「ガオガガオガ?」

「だけどこれっぽっちじゃはらはふくれないだろうに。さ、はいりなさい。ちょうどずきけてるから」


「ガガオ! ガガオ!」

「おしるったのねえガーちゃん。あら、しらたまがおわんにひっついちゃってるわ」

「ガオガオ?」

しらたまペター」

「ガオ、ガオガ」

のこしたらばちがたるからね。ふう、ガーちゃん、おくちけて」

「ガッ――!?」

「はい、あーん。あーん……」

 ガ、ガオガ!? ガオガガオガ……!?

 ガガオガ、ガッガガオガオ……。

「はい、ごちそうさまでした」

「おわんカラッポー」

「せめてスプーンくらいは使つかえるようにしないねえ。そうだ、うちでれんしゅうするといいわ。おなかがすいたときにまたいらっしゃい」

「……ガーガオ……」

えんりょしなくていいのよ。むすめはとっくによめってて、おっともおととしっちゃって、ふう、ひましてるから」


きゅうグルグルー」


「ガオ」

「たくあんツルー」

「ガオ」

「たくあんポトー」

「ガオ……」

「スプーンが使つかえるようになっても、さすがにおはしむずかしいみたいねえ」

「ガ、ガオ!」

「たくあんグサー」

「あらあらガーちゃんったら、ばしはだめよ。ふう」

「ンガンガ」

 ガーガオガガオガ、ガオガオガッガオガガオガガ。

 ――ガガ、「」ガオガ、ガオガガガオ。

 ガオ、ガオガガオガガオ、ガガオガオガオガ。

「……ふう、おちゃでも、ふう、れようかねえ」

「ガオ。……ガオ?」

「ええと、ふう……ふう、なんだかくるしい、わね……」

「ガーガオ? ガーガオ!?」

 ガッガオ、ガオガガオガ!?

 ガガガオガガオガッガオガ!?

「が、ガーちゃん……ふう……でんでんってくれないかい……」

 ガオ! ガオガオガ――ガ!

『ガーちゃんったらものりねえ。このおはなやくそうになるってわかってるんだろう?』

『わたしがちいさいころには、かんそうさせていためにしてたんだよ。ふう、こうのおかにはいまでもいてるんだねえ』

 ガオガ! ガオガガオ、ガッガガオガ!

「ガッガオ、ガーガオ!」

しょうバキバキー」

「ブロックべいドカーン」

くるまキキー」

「うわあ!? なんだなんだ!?」

 ガオガ、ガッガオガ、ガガオガガオ!


おかザワザワー」

「カラスバサバサー」

ふううんきゅうげるー」

「ガオ、ガオ、ガオ……ガガオ」

 オガガオガオガ、ガーガオガガオガオガオ。

「――ようやくしっしたな、ガオガオライノス」

「ガオッガ!?」

そらあらわれ、てんにてたたずむぼくのは! 70%ななじゅっパーマン!」

 ガオ! ガオガガガオガ……。

「ここいっげつにんげんがいくわえなかったのはほめてやろう。だが、おまえきゅうさんわりだ」

「ガガオッガーガオ!」

「ぼくにあつまるひかりよ」

みぎピカピカー」

「――レーザーこうせん、1てんばいだ」

 ガ、ガオガガオ……!

げてもむだだ。ここからならまちぜんたいろせる」

 ガオ……ガ、ガオガ!?

さっしがいいな。そう、おまえのぞむなら、まちもろともさんわりのほうにしてやろう」

「ガガオッガーガオ……!」

 ガオガオガオ、ガーガオガガオ。

『あらあらガーちゃんったら』

『はい、あーん。あーん……』

『おや、ガーちゃんじゃないの』

「――ガーガオ」

『ありがとう、ありがとうよ』

 ガガオガガオガ――ガガガオ!

「フッ、しょうするつもりか。いいだろう、きゅうななわりはぼくがまもる!」

「ガーガオ……ガーガオオォーーーー!」

ほのおこうとぼくにはかない! おかえしだ!」

「オガァーーーー……!」

 ガーガオ――ガオ――ガーガオガ――――。


きゅうグルグルー」


「――とおりがかったしんせつひとが、すぐにきゅうきゅうしゃんでくれてよかったわ」

くるまカラカラー」

「ママがどくなんてしたら、わたし、えられないよ」

「うちのむすめときたらあいわらずのしんぱいしょうだねえ。ふう」

「ねえママ、わたしたちといっしょらそうよ」

「そこまでしなくたっていいわよ。くるまだっておおげさなのにねえ」

「あのいえ、リフォームしたらもっとめるよね。こわれたへいなおすついでに――あら? げんかんさきはなたばがある」

「――おやおや」

「ラッピングはされてないし、ちょっとげてるし、おはなくきでまとめてあるなんてへんなの。ごきんじょさんかしら?」

「いや、ちがうよ」

「ママのってるひと? ねえ、だれからの?」

「うっふふ、命の恩人いいひとよ」

「ホントに~?」

「そのうちしょうかいしてあげるわよ。いつかまた、おなかをすかせてやってるだろうから」

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読み書きに、会話もできない、怪獣が、人に惚れたら、こうもなるかな。 水白 建人 @misirowo

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