第4話認識違いは埋まることはない

「いいクラスだったよね。まとまりがあって」



中学を卒業する日。

最後のホームルームが終わりあとは下校するだけの教室の片隅で聞いた言葉。


良いクラスってなんだろう。


まとまりってなんだろう。


きっとみんなの記憶には楽しかった学生生活が走馬灯のように流れているのだろう。


運動会や文化祭、学年ごとの合唱コンクールに修学旅行。義務教育を彩る行事のひとつひとつに確かな思い出を刻んできたはずだ。


ぼくだって頑張った。


体をうまく動かすことがでない運動音痴なりに、クラス対抗リレーを走ったし、音痴とは言われない程度には歌える歌声で合唱コンクールにも臨んだし、うまく班になじめず、あぶれたなりに班員として過ごした修学旅行。


悪いクラスじゃなかったのは確か。でも、ぼくには、良いクラスにも思えなかった。


卒業の日。最後のホームルームに渡される一人一枚の寄せ書き。輝くような思い出を書かれた寄せ書きの内容を共有したことはいけなかった。それが結果として明暗のついた学生生活をぼくにことさらに刻み付けた。


人気者の彼らの寄せ書きには、さまざな思い出が刻まれていて色鮮やかに輝いていた。対して、ぼくの寄せ書きには、ただ淡々とした謝辞が多く乗せられていた。

卒業おめでとう!と。また会う日まで。と。


ただその中で、ひとつだけ救われたこともあった。


『困っていた時手伝ってくれてありがとう。あと、あのときは、ごめんね。卒業おめでとう』


綴られた言葉に、丁寧な文字に、なぜだか視界がぼやけ、涙が溢れた。













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僕はただ普通に生きたかっただけなんだ むくろぼーん @mukurobone

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