恵比寿西物語

@JAMUNITED

SideA00 One day

赤崎潤25才、東京に出て来て早2年過ぎた。


初めは都会に慣れなくて正直しんどくて

田舎の家業を継ごうと考えたくらいだった。


なんとか踏ん張ってようやく

自分のリズムというか

存在というか

役割見たいな物を

東京で見つけ働いている。


住まいは渋谷区恵比寿

古い4階建の中古マンションの1階

というか半地下風のちょっと変わった作り

恵比寿も代官山寄りは坂が多く

坂道の途中に建っている俺のマンションは

1階は半地下風となる。


その佇まいが気に入ったので此処に決めた。


2DK家賃9万円

かなり頑張った。

地方出身者は都会の生活に憧れ洒落ところに住みたがる。


しかし、都会の家賃の高さに挫折する。

俺もその1人だった。


あれは確か東京に来て間もない時期で

目黒通り沿いのいかにも昭和レトロな

不動産屋の前で足を止めた。


木枠のガラス戸に文字だけの部屋情報を

幾つも貼り付けている。

昔からあるんだろうけど…

今時は部屋の写真付き情報が無いと入りたいとも思えない。

パソコン、ネットの時代から取り残されているんだくらいしか思えなかった。


しかし、不思議とその場から離れられない俺がいた。


(コンコン!ガラガラガラー)

怖いもの見たさでガラス戸の木枠を軽くノックして不動産屋に入る。


「こんにちは?すみません」


案の定年老いた気難しいお爺さんがなんだ冷やかしかとも思える眼差しで此方を見る。


「あの、この辺りでひとり暮らしの住まいを探して居まして、、、」


まだお爺さんはいらっしゃっいのひと言も言わず此方を見ている。


此れはなんか試練か?

俺は部屋を探してるだけだ。

やはり入らなければよかった。


するとお爺さんは

『まあ、其処にかけなさい』

言葉を発した。


なんだ普通に喋れるのかよ。

なかなか喋らないから俺は幻と対峙して居るのかと思った。


『それで?』


「はい、愛媛から出て来てこの春から東京の会社で働いているんですが…」

「部屋がなかなか決まらず今はマンスリーマンションに住んでいます。」

「この辺りでおすすめの物件ありますか?」


『うん〜〜ん、、、』

眉間に皺を寄せて首を左右に傾けて考えいる。


『来月まで待てるか?』


「はぁ、、、はい」

「気に入った部屋なら待ちます」

 

『よし、じゃぁ行こう』

お爺さんは椅子にかけてあった上着を羽織り帽子を被って外に出た。


『ほら!何してる部屋を見に行くぞ』


「あ、はい!」

俺は慌てて椅子から立ちあがり不動産屋を出た。


入口の鍵も閉めずにどんどん先を歩いて行く。

東京人は歩くのが早い。

俺は必死に着いて行く。


恵比寿、代官山は坂が多い、坂道の早歩きはキツい。

すっかり体力も低下してる自分に気がつく。部屋が見つかったら運動でも始めようと思った。


お爺さんは代官山駅方面へ歩き恵比寿西1丁目の物件前に着いた。


『此処じゃ』


『軽量鉄骨構造の4階建マンションで1階が空いている。まだ出たばかりで内装工事をしてからだから来月から入居出来る』


『いいか?』


其処は1階だが半地下風な粋な佇まいの部屋だ。

まあ男だしセキュリティなんて気にしない、

1階、直ぐに帰って部屋に入れるからいいじゃないか…

同じ階には向かい合わせにもう一部屋なのでご近所付き合いなんて気にしなくていい…

俺の部屋の下は駐車場だからどんどんしても大丈夫…

地面からの冷気も少ないだろうしなかなかの物件だ。


俺はこういうのを求めていたんだ。


『家賃は9万全て込みだ』


予算をかなりオーバーしているが…


『部屋見るか?』


「はい!」


玄関から入ると左右の部屋を繋ぐ少し長めの廊下だ。

右に6畳洋室にキッチンで

左に6畳の洋室で完全に振り分けられている。


此れなら料理の匂いもベットの部屋までは来ないだろう。

なかなか良い感じの間取りだ。


バス・トイレは別で先程の長めの廊下にある。

キッチン側の部屋の窓を開けると坂道が見える。

下が駐車場入口だから此処からは泥棒も入れないだろう。

奥の部屋側は小さなバルコニーと雑草が生えたマンションの小さな庭があり明かりは入るが周りの建物もありやや暗いがまあいいだろ。

東京は何処もこんなもんだ。


「あの、なんで俺にこの部屋を勧めてくれたのですか?」


『この物件はな昔からのオーナーさんから不動産屋さんの目に適った人を入れて欲しいと言われ他の不動産屋には一切出していない物件なんじゃよ』


古くからの繋がりでオーナーさんは外国籍の方らしい。


「面談とかあるんですか?」


『無いよそんなもん』

『お前さんは目が純粋だ。しかもきちんと挨拶も出来るし言葉遣いも丁寧だ。まあ同郷のよしみもあるがな』


「え!不動産屋さんも愛媛ですか?」

「俺は伊予です」


『そうか良いところだな。

わしは松山から東京に出て来た』


その後不動産屋に戻り手続きなどしながら

愛媛の話で花が咲いた。

そんなこんなで今に至る。


会社は小さなIT系で俺は広告を取ってくる営業で働いている。

残業はあるが小さな会社で風通しは良いし皆んな良い人だ。


入社してから2年過ぎた俺はもう先輩で今年から1人新入社員の面倒を見る事になった。


立花渉、23才、彼も地方から東京に出て来た数年前の俺と同じ境遇だから色々と面倒見てくれと言われた。

まあ辞めないようお願いすると上司から言われた。


ここ数年、新入社員は俺ひとりしか残っていない。


今は転職の時代だと言ってもっとやりたり事があると言い辞めて行ったり今の子は簡単に会社を辞める。

辞める事をネガティブと捉えてない。

むしろポジティブだ。

そんなことでこの会社に居着いた俺に白羽の矢が刺さった。


いつもの様に朝のミーティングを済ませて午後からは外回りに出た。


もうそろそろ半年経つ立花も仕事に少しずつ慣れて今日は初めての自分で取った契約の日だ。

緊張しながらも無事契約終了して会社に報告した。


上司からは2人でお祝いしろ領収書は貰ってこいと言われ今はまだ17時だけれど直帰の許可が降りた。

大切な書類は俺が預かり飲みに行く事になった。


「立花?何処かで今日の初契約のお祝いをと部長からでただ飯食うぞ。何処か行きたい所あるか?」


『えーっと?

それじゃ恵比寿のカフェに行きたいです』


「カフェ?

最近の子は居酒屋チェーン系とか焼肉屋じゃないんだ、、、よし行こう」


タクシーで西麻布から恵比寿駅まで行き。

店の名前を聞いた。


「コルドンブルー?」

それって俺がちょくちょくひとりで行く所か〜会社の人と行くのは恥ずかしいな。

なんか俺が連れて来たみたいに思われるかな?


〈いらっしゃっませ?〉

〈何名?、、、様、、、あ!赤崎さん〉


『先輩!知り合いなんですか?』


「いや、、、まあ、、、」


席に座って全て話した。

たまたまいつもひとり飯をするカフェで

なんか常連客ぶって知り合い連れ来たみたいにならないかと思っていたと話した。


(ハハハハ……ウフフ…)

皆んなに笑われた。


「良かった場が和んだ」


何故か春ちゃんが俺の隣に座って話を聞いている。

まだ店は忙しくないからと言い

確かに俺たちだけだ。


「あ!立花、この子は春ちゃん、確か大学生だよね」


〈そう2年です。よろしくね〉


『あ、あ、よろしくお願いします』


〈立花さん下の名前は?〉


『渉(わたる)』


〈じゃあ此れから渉くんって呼ぶね〉


「あの?春ちゃん俺は赤崎さんでなんで立花だけ渉くんなの?』


〈だって年が近いから、、、〉


「ふ〜〜ん」


たわいもない会話で立花も緊張が解れた。

適当にビールとつまみを頼んで仕事以外の話で盛り上がった。


立花は山形から出て来て東京で行きたい所がたくさんあるけれど…

まだ仕事で疲れて休みに出掛けられないと言っていた。


確かに背は高いがヒョロいと言うか線が細いタイプで体力は無さそうだ。

まあ俺も生活のリズムに慣れるのに時間掛かったから焦らず時間のペースでいいんじゃないかと伝えた。


「何処か行きたい所あるなら俺付き合ってやるぞ」


『本当ですか?』


「ああ、、、」


立花は羨望の眼差しで此方を見ている。

少しは頼りになる先輩に見えたかな。


明日は休みの日だから夜遅くまで初めての契約祝いをした。


店から出て駅まで行って分かれた。

俺ひとり歩いて帰る。

家が近いと嬉しい。


土曜日は家でゴロゴロした。

翌日は昼くらいまで寝ていた。

スマホを取ると11:40だ。


《LINE立花から》

【初めての契約のありがとうございました】


《LINE吉岡さんから》

【お昼ごはん作ったから来て】


【吉岡美玲、27才】

バツイチ、フリーのウェブデザイナー。凄く綺麗な方です。


今の会社でウェブ広告の挿絵や画像、動画編集を依頼していてちょくちょく会社で顔を合わせる事が多かった人です。


立花とコンビを組む様になり何かとクライアントの依頼でここ最近話す機会が多かった。


聞くと家も近所でちょくちょくお呼ばれする様になった。お世話になっている人なので社交辞令程度でのこのこお食事を頂く間柄(餌付けされている?)になった。


まあ、仕事の愚痴を聞く係りが俺の役目である。

たまにそのまま泊まるが男女関係は無い。

そんな気にもならないから良い関係のご近所さんなのかもしれない。


東京に友達は余り居ないから貴重な存在だ。


【12:40頃に行きます】

と返事してまだゴロゴロする。


スウェトの上下に頭はセットしないでニットキャップを被った。

まあご近所だし吉岡さん家だしいつもの感じで家を出た。


吉岡さん家は代官山駅方面に歩いてキルフェボンの近くだ。

手土産には高いので手が出ない。

俺の頑張ったご褒美レベルだ。


なので家からビンチョウマグロの漬けを持って行った。

最初は手土産のスィーツなどを持って行ったが毎回お金が掛かるからいいと断られたけれど、俺の手料理的なやつや500円位の物なら快く受け取ってくれる。

まあお互いの丁度いい落とし所だった。


(ピンポーン!)


『は〜い、どうぞ』


「お邪魔します」

あ〜良い匂いがします。

女子の部屋だ…

此れはやられるな世の中の男子諸君。

俺は近所の親戚の従兄弟の家程度しか思ってないから踏んばれる。


「吉岡さん、此れどうぞ、、、」

「あれ?」

今日は知らない女の子がいる?

第一印象かわいいな。


「あ、初めまして赤崎です。赤崎潤です」


〈あ、矢沢です。矢沢ゆあんです〉


何2人共固っ苦しい挨拶して…


『はい料理運んで〜』


「あ、はい!」

〈はい!〉


『それじゃ乾杯!』

「乾杯」

〈乾杯!!〉


お昼からワインを飲みながらおしゃべりしてご飯を食べて、、、

此れ完璧に女子会!に男子?

…と言うか男子には見られてない。


『じゃぁもう一度紹介するね』

『此方赤崎くん、ご近所さんです』

『此方はゆあんちゃん私の後輩って感じかな』


まあ余り紹介になってないけど吉岡さん、、、

まぁ、いいか、、、


『この子ね男の子に免疫無いのよ!ずーっと女子高、女子大でね』


話している間に顔を真っ赤にする矢沢さんはかわいい。


〈もう先輩辞めて下さい…〉


『まあそんな事で赤崎くんなら話し易いし危なく無いし親戚みたいだからって今日は誘いました』


「なんだか褒められているのか殆ど軽口なのか微妙ですけど、、、」


『まあそれなりに評価しているから』


「あ、ありがとうございます」


『赤崎くんこのビンチョウマグロの漬け美味しい〜白ワインに合うよ。見た目に反して結構料理上手だよね赤崎くんはさ』


「あ〜自炊してますから」


〈本当美味しいです赤崎さん〉


「ありがとう嬉しいな…」


『ちょっと私が褒めた時と反応違うんですけど〜』


「同じですよ!」


『ゆあんちゃんがかわいいからってもう〜』


〈やめてください先輩〉


また顔を真っ赤にする。

かわいいなこういう子なかなか居ないよな。


お酒、ご飯を食べながら話も盛り上がりすっかり女子トークとなっていた。

お酒も入り恋バナをし出した。


吉岡さんは実は立花が好みらしい、、、

確かにジャニーズ系でかわいい感じなんだろう。


いつも一緒に居る俺に…

その辺女の匂いがするのか?

彼女は居るのか?

趣味な何なのか?

何処に住んでるのか?

など個人情報だだ漏れの聴取が始まった。


「立花に彼女か〜居ないと思うけど、、、」

「いつも一緒に外回りしてるけど今日予定あるとかLINEをしょっ中確認したりして無いし休みの日も結構俺が買い物に付き合っているから」


『ふ〜〜ん。良し!で!どんな子タイプ?』


「どんな子って男同士そんな話はしないけど、、、」


〈先輩!焦り過ぎです!まずは飲んで下さい〉


『あ、あ、ゆあんちゃんありがとう』


「今度聞いてみるよ」


『お願いね!よろしくね!ね!』


「でもさ会社とかで良く喋っているんだからお昼ごはん誘ったりすればいいのに」


『それが出来たら聞いてませんけど!』


「其処は奥手なんだよな吉岡さん…」

「俺にはグイグイ来る癖に変に乙女な所が出て来るんだからややこしい」


『ややこしいとは何か?』


「何でもありません〜!そうだ!」

「締めにビンチョウマグロの漬けを出汁でお茶漬け風にして食べませんか?」


『食べまーす!』

〈はい、頂きます。〉


「キッチン借ります」


家から持って来た出汁を温めて、薬味で大葉を刻み、刻み海苔をかけて出来上がり。お好きなだけ出汁をかけてどうぞ!


「あーー染みるこの出汁」


〈美味しいです〜〉

『うんうん、美味しい』


「そうでしょそうでしょ。赤崎家直伝の出汁ですから」


〈赤崎さん凄いです!出汁から取っているんですか?〉


「休みの日におかずを作り置きしながら出汁も取っておくと便利なんだ。」

「お味噌、煮物、蕎麦、うどんなんかにも使えて大体直ぐ無くなるけど。こういう感じで出汁茶漬けも出来るから遅く帰った時便利なんだ。」


〈お料理出来る男子って凄いかっこいいです〉


『あら〜ゆあんちゃん惚れたか〜』


〈もう先輩!飲み過ぎです。此れ飲んで下さい〉

チェイサーを渡した。


耳元で彼女は…

〈今のかっこいいは本当です〉

と囁いた…


久しぶりにドキッとした。

男の子に免疫無い子だからこの男殺しの仕草も天然なんだろ。


飲み会ばかり行っている子はちょっと信用ならないと俺だけが思っている。

まあ東京に出て来てあれこれお酒の席で仲良くなって付き合っても結局最後は振り回される事が多かったからな。


恋愛って難しいよ本当、、、。


夕方にはお開きとなり代官山駅まで矢沢さんを送った。


歩きながら駅までおしゃべりした。


〈今日は楽しかったです。

来る前はドキドキしてどうしようかと思ったけど赤崎さんが話し易くて先輩も居てお料理も美味しくて凄い楽しいお食事会でした〉

〈ありがとうございます〉

〈赤崎さんのお家はどちらの方ですか?〉


「あ、俺の家は代官山駅を過ぎて恵比寿駅方面に行って直ぐ辺り」


〈本当ご近所さんなんですね〉


「矢沢さんが来るんだって知ってたらもうちょっとちゃんとした格好したのにね」


〈いいえ、素の赤崎さんが見れて良かったです〉


「そうかな、、、そうだ矢沢さんは何処?」


〈私は都立大学駅で自由ヶ丘よりで実家です〉


「なんだお嬢様か〜」


〈もうやめて下さい。から飼うのは〜〉


「うそうそ、実家って良いよね。俺もたまには帰るか〜」


〈ご実家はどちらに?〉


「俺、愛媛県の伊予って所でさ、瀬戸内海に面していていい所なんだ」


〈四国の愛媛県、いいですね。道後温泉もありますよね〉


「あるある」


〈一度は行きたいな、行ってみたいな〉


「来れば良いよ。

吉岡さんと一緒に俺案内するからさ」


〈いいですね。先輩に相談してみます〉


歩きながら話をしているとあっという間に駅に着いた。


「じゃそろそろ、また」


〈あ、あの〜〉

彼女は少しもじもじしながら…

〈よ、良かったLINE交換しませんか?〉


「あ!」

こういうは男の俺が言うべきだった。

すっかりご近所モードでごめんなさいゆあんちゃん。


「こちらこそよろしくお願いします」


矢沢さんとLINE交換して分かれた。

その夜にご馳走様のメッセージが届いた。


ゆあん

【今日はとても楽しかったです。

漬けマグロの話を家でしたら母親が今度作って見ると言ってました。】


【じゃあ今度はオレ特製のイカの塩辛パスタを作るよ】


ゆあん

【イカの塩辛なんて珍しいきっと美味しいです赤崎さん!パスタ楽しみにしています。たまに連絡しますね。おやすみなさい。】


【こっちも連絡します。おやすみなさい。】


いつ振りかな?

女子とLINEのやり取りするの、、、

吉岡さん?あ、それは女子だけど近所の親戚レベルなんでノーカウントだろうな。

後はたまに母親、妹くらいだもんな。


週明けのオフィスはスロースタートだ。

午前は会議で今日は午後から打ち合わせで外回りはなし。


昼飯を食べに近所の蕎麦屋に行く。

立花と同期の中野くんと3人です。


ざる蕎麦小天丼セットを頼んだ。


立花が…

『赤崎さん週末何してました?』

「俺、土曜日は家でゴロゴロ、洗濯、料理の作り置き、ゲームかな」


『赤崎さんもゲームやるんですか?』


「まあちょっとな。今は原神かな」


『俺もです』


〈僕もです〉


3人で原神押しキャラの話しで大盛り上がりした。


『先輩それじゃ昨日は?』


「昼近くまで寝てからお昼ごはんに誘われてご馳走になった。近所に親戚みたいな人がいてたまにごはんをご馳走になるんだよ。まあおしゃべりに付き合わないといけないけどな」


立花と中野くんはすっかりご近所のおばあちゃんだと思っている。

仕方ないそのシナリオで進めよう。


「昨日はお孫さんがいて歳は24才くらいかな。なかなかかわいい感じだった」


『いいなぁ俺たちそんな事ひとつも起きないよな』

〈そうだな東京来て飲み会はあるけど友達増えるけど彼女にはちょっと、、、〉


「それは俺も分かる」


『やっぱり先輩もですか!』


「まあそういう出会いもあるけどもっとこう違うストーリーが良いよな、、、」

とんだ男3人の乙女系恋バナか、、、。


『そうです!そうです!』

『例えば社内恋愛とか、

取引先でたまたま出会うとか』

『いつものコーヒーショップでとか大人の感じのシュチュエーション的な出会いがいいすっよ』


「それじゃ中野くんはどんなタイプが好みなの?」


〈僕は同じ歳がいいですね。話も合うし、気を使わないで良さそうだし、友達から始めたいですかね〉


「ふむふむ、、、」

「立花は?」


『断然年上かな。年上っても幾つまでだよ。今23才なんで30才くらいまでOKです』


「お〜行くね」


『なんて言うですか良い意味で自由にさせてもらえると言うか色々知ってるから頼りになるし…』


「そうだな世間一般の常識やらなんやらは自分より人生経験のある人が有利だもんな」


『例えば男の子で言えば先輩ですかね』


「俺か?そんな趣味ないぞ!」


『例えばですよ!』

『色々と仕事の事や世の中の事を教えてくれるし余り干渉して来ないし、こっちが誘ったら断らないで出掛けてくれるし、食べ物の好みも合うし、趣味のゲームも好きだし』


「ちょっと待った!立花、、、その辺にしといてくれ」


『えーまだありますけど料理が上手とか、仕事に一生懸命な所とか、、、』


「分かった分かった。それ以上言われたら告白されてる気分になるわ」


〈確かに赤崎さんは俺たち同期の中でも人気ありますよ。皆んなよく立花にパートナー変わってくれって言ってるもんな〉


「確かに他のバディはスパルタ系か放置系だもんな。でもそんないい感じの年上いるか?」


『ですから先輩機会があったら俺たちにも紹介して下さい』


「って結局飲み会になるじゃんか!」


『そうか〜』

〈だなぁ〜〉

(笑、笑、笑……!)


お昼は話が盛り上がりあっという間だった。


今週名古屋に2泊3日の出張が決まった。

クライアントの新規工場を見学し新しい広告の検討の為だ。


立花は出張が初めてでどうしたらいいかと相談して来た。

そうか持ち物とかだな。

俺が昔作った出張持ち物リストを俺のノートPCからメールで送ってやった。


『後、、、まだ、その、キャリーケースを持って無くて、、、ネットで色々検索したんですがなかなか決められなく先輩、、、』


「そうか…」


立花のこんな性格の所はやっぱり年上にリードされたいと思う所なんだろな。同じ歳や年下だと優柔不断とかなよなよしてるとか勘違いされた事あるか、付き合うけど上手く行かなかった経験ありって所かな。


「キャリーケースか?俺も最初は悩んだよ。高いの見ればキリないだろ。しかも仕事だから余り高級なメーカーだと取引先の心情損ねるかもと考えるとな、、、」


「俺が昔使っていたやつがあるからそれならやるよ』


『えーいいんですか?先輩!』


「部屋が狭くなるから捨てようと思ってた所だから、ちょっと傷あるけどまあ綺麗な方だと思うけど。同じメーカーのモデル違いを去年買ったから立花が俺のお古で良ければどうぞ」


『助かります』

『結構キャリーケースって高いし痛い出費になる所だったし先輩のお古ならなんでももらいたいです』


またグイグイ来るな弟系キャラか?


「じゃ今日の帰りに俺の家寄って帰ろう」


『そう言えば先輩何処に住んでいるんですか?』


「俺ん家、恵比寿」


『えーー!恵比寿に住んでいるんですか?かっこいいー!』


「かっこいいか?」


『僕の中で住みたい街ランキング2位ですよ!』


「2位かよ!その感じなら1位じゃないの?」


『1位は代官山です!』


「あーーそうだねオシャレだよな…」

「立花の好きなカフェや雑貨屋も沢山あるしな」


『そうなんです!今の所は急いで決めたから将来的にはその辺に住みたいな〜と考えてます』


『先輩の家参考にしていいですか?』


「あーーいいけど」


『やった!もっと早く先輩の家聞けば良かったよ』


そう俺はやんわり隠しているんですけど。

終電逃して会社の人に入り浸りされたくないからな。


会社は中目黒にある。

いつも歩いて会社まで行っている。


仕事が終わり

中目黒駅から代官山駅まで俺と立花はひと駅で乗り降りた。


『先輩此処は代官山駅ですよ』


「そうなんだよ恵比寿駅と代官山駅の丁度中間くらいなんだよ」

「前みたいに恵比寿駅から来ればコルドンブルーがあるし代官山駅からは特に無いか?無いな」


「住所は渋谷区恵比寿西1丁目なんだよ」


『へぇ〜。殆ど代官山ですよ』


「まあそうだな。このマンションだよ」


『へぇ〜坂の途中にあるんですね。いい雰囲気です。タワマンより絶対こっちがいいです』


「まあタワマンと比べちゃダメだけど、、、」

「さあ上がって」


『完全振り分けなんですね』

『こっちはダイニングにしているですね』


『シンプルなソファはカリモクWT36モデルの二人掛けテキスタイのネイビーですね。それにリビングテーブルの組み合わせがシンプルでオシャレです』


『冷蔵庫はHaierなんですかコレも家具に合うスタイルですね。流石先輩!』

『コーヒーマシンはsaecoのLirikaじゃないですかいいな〜』

『オーブンレンジはビストロ!トースターはこんがり倶楽部だ!象印ですね。これトースト同時に4枚焼けるやつです!凄いな先輩』

『やかんは柳宗理、フライパンはティファールフライパンセットでカラーブラウン!うんうん、、、』


「立花、、、恥ずかしいから余り見るなよ」


『いいじゃないですか!』

『憧れアイテムばかりなんですよ』


「俺余り出掛け無いし家にいる事多いからネットでコツコツ最安値を調べて買ったもんなんだ。自分が気に入って大切にしたい物を選んで集めると自然と揃って来るよ」


『ついコレで良いかなと買ってもまた違うの欲しくなるんですよ』


「そうだろう。まあ人それぞれだけどな」

「これだって結婚して奥さんがイヤって言ったらさようならだよ」


『それもイヤなんですよね』


そこは俺たちにはまだ分からないからひとり暮らしを楽しんでいるんだ。


『TVはREGZA!録画も出来るしネット動画にアクセスし易いですよね』


「家電芸人みたいだよ立花〜」


『先輩最後に掃除機見せて下さい』


「掃除機なんて見て楽しいのかよ〜」

「はい、コレです」


『キターーー先輩!マキタですか!しかも18Vカプセル式をセットしているんですか!玄人(職人)好みですか?』


「コレな電動ドリルとかと一緒だからコレにしただけだけど」


『先輩DIYもするんですか?』


「この部屋の壁紙とかトイレ内とか寝室の壁面とかは俺がやったけど」


『マジか〜ちょっと寝室いいですか?』


「立花〜お前何しに来たんだよ〜」


『失礼します』

『かぁーーーー!先輩!なんですか?コレは!』


『寝室は片側壁面がパンチングボードで

オリジナルのデスク家具に

ゲーミングPC、PS5、スイッチにモニター2台。此処は夢の国ですか?』


『ゲームやっていいですか?』


「いいよ」

「かたっくるしから上着とシャツ脱いでこれ着ろ。トレーナーを渡した」


『先輩!コレ!supremeですか?』


「そうだな。書いてあるな」


『すげ〜欲しい』


「いいぞ!」


『えーーーー!くれるんですか?』


「だからいいぞ!」


『やったー!』


まあかわいい弟みたいなもんだ。


「俺ごはん作ってくるからゲームしてろ」


『はーい!ありがとうございます』


30分後、「出来たぞ!」


『先輩!すげ〜いい匂いがします』


「トンテキだ!」


『俺トンテキ初めてです。

名前は聞いた事あります』


お皿には盛り盛り千切りキャベツにトマト、きゅうり、そしてトンテキ!カリカリニンニクもお肉に乗っています。


「コレはなめこ味噌汁な」

「後はお漬物。大根と長芋だ」

「さあ召し上がり!」


『トンテキ!うま!』

『お肉柔らか!』

『先輩!店出せますよ!』

『コレは売れますと言うか俺買いますよ!』


「そうか美味しいと言ってくれるのが一番だよ。ありがとう。」


『なめこ味噌汁は赤味噌、出汁うま!』


「トンテキってさ三重県四日市の名物だから赤だしにしてみた」


「漬け物、こっちは大根をスライスしてゆずポンに胡麻油をちょっと…」


『さっぱりしてシャキッシャキッが残っていて病みつきです。コレ先輩が作ったんですか』


『あー切ってゆずぽんかけただけだけど一晩すると食べ頃で2.3日で食べる感じ』


「こっちは?コレは長芋を厚手の銀杏切りにしてつゆの素に胡麻、胡椒、ゆずぽん、ごま油小さじで出来上がり。こっちも食感がいいんだよ」


『頂きます!うまいうまいですよ』

『俺も真似します。俺漬け物だけでごはん2杯いけます』


「そうだろうそうだろう、いけるよな。

納豆と一緒に食べても美味いよ」


『それ!いいです。分かります』


「あとは炊き立てご飯の時に大根の味漬物にして細かくサイの目切りにして漬物汁をかけて生卵でTKGが美味いんだ」


『美味しそうです』

『今度やって見ます』


「大根も長芋も安い時に買っておけば色々出来るから自炊には欠かせない。そうだコレも食べて見るか?きゅうりの漬け物だ」


『先輩〜コレ

Qちゃんじゃないですか〜』

『先輩はきゅうりのQちゃんも作れるんですか?』

『凄すぎます!もう神です!』


『先輩!あーお腹いっぱいです』

『もう食べれません』

『眠いです』


「ベッドで少し寝てから帰れば」


『でもゲームもしたいです…

でもやっぱり眠いです。グーー、グーー』


よく喋り、ゲームして、ご飯を食べてたら眠いよな。

その後21時頃立花を起こしたが今日は此処に泊まると言い出し立花はコンビニへ下着を買いに行くと言ったが新品がいくつかあるからそれを選べばと言った。


超ニコニコしている。


シャワーを浴びてゲームをした。

立花のワイシャツ、Tシャツは洗濯機に入れ回して置いた。

朝までには乾くだろう。

流石に下着は申し訳ないらしくコンビニの袋にしまった。


『やっぱり先輩が女子だったら最高ですよ〜』


「残念だったな」


こうして俺の周りが少し賑やかになっていった。


まだ彼女は出来ない、、、

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