エピローグ

卒業式


桜が咲き始めている。


学校の一番大きな桜は、もうかなり咲いていた。


オレはその下で思い出に耽っていた。

一番頭に浮かんだのは、やはりあかねとの再会だ。

あの事が無かったらオレは今頃何をしていただろう。


式が終わり、友達や部活の仲間、先生に挨拶を済ませオレとあかね、西やん、ひー君と外へ出ると、

伊東と大城が待っていた。


大城はバレーの強豪校へ。

伊東は東大合格率の高い高校。

西やんとひー君は、同じ成績トップクラスの公立高校だ。


オレとあかねは同じ学校でも、オレだけ寮に入る。

学費の事とスポーツ推薦だからだ。

あかねと一緒にいる時間は少なくなる。

けど、あかねにもオレにも叶えたい夢がある。

寂しくないって言ったらウソになるけど、それでもオレ達は、お互いを支え合っていこう。

そう約束したのだ。


西やんが「そういやイッチー達、いつ向こうに行くの?」と聞いてきた。


「明後日には行くよ」


「そか。見送りに行くよ」


「ありがとう」


「それでさ〜今日は〜、しおちゃんちに、みんなでお泊まりするんだよ〜うらやましいでしょ〜?」


……相変わらずのんびりしゃべる大城。

周囲から「鬼の大城」って呼ばれてるそうだ(なので女子生徒から人気がある)。

人って、見かけによらないよなー?


とか思ってると、頭の上から(また伸びたな)大城はオレに、


「(ボソッ)だいじょぶだよ〜。“ あの事“は〜ナイショだから〜」


顔から汗が出る! やめて。


「(ボソボソ)なんなら私も〜坂井に、”アレ“してあげよ〜か〜?(笑)」


……ホントやめて。心臓に悪い。

コイツ性格悪いなぁ。


「一郎?どうかした?」


ほら!あかねが心配してんじゃん!


ニコニコ笑いが止まらない大城。

反対に何かを悟った様な、伊東。


キョトンとしている西やん、ひー君。


あぁ。もうすぐお別れか。


見上げると、

少しだけ咲いた桜がまるで手を振る様に、揺れていた。




2日後


新横浜駅 新幹線ホーム


オレとあかねは2人で見送られていた。

あかねの母は一足先に向こうへ行っていた。


みんなが笑顔の中、妹が、


「お”に“い”ち“ゃん!バカとか言って、ごべん”ね“!!だから、いがないでー!」


顔をぐちゃぐちゃにして、泣いていた。


「オイオイ(笑)休みになったら、帰ってくっから。そんなに泣くな」


「……うん。そんときは、お風呂に一緒に入ろ?」


「それは遠慮する(笑)」


「一郎、そろそろ時間」あかねがそう言って、促す。


みんなとの別れは少し寂しい。

これから辛い事も沢山あるだろう。

けど今は隣に、あかねがいる。

胸の中には夢がある。



やがて列車が出発する。

何もかも振り切る様にして、スピードが増す車内でオレは、


「あかね」


「何?」


「愛してるよ」


オレもあかねも、顔が真っ赤になる。


あかねは小さな声で、


「私も愛してるよ」

お互いに手を握って、幸せをかみしめている。



俺たちの人生は、まだ始まったばかりだ。

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ルーズリーフ 竜崎 @poyo3nt4

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