第4話 ゲームの神、奇妙な現象にあう
僕は今、森の中を散策している。
拠点から東の方向だ。
川が流れていた。
川に沿って歩いていると、迷うことはそうそう無いだろう。
拠点の周囲を把握する際の目印にしやすい。
時折しゃがんで、キノコや植物を採る。
それらは全部食用だ。
集めた物は大きな葉のリュックの様な物に入れる。
これは「ヒトクイ草」という植物だ。
甘い匂いを放ち、釣られて近づいて来た動物を捕食する。
その為、蓋のついた袋の様な形状をしており、リュック代わりになるのだ。
その為、NWCは「リュック」と呼ばれ、見た目とは裏腹にプレイヤー達から愛されていた。
コイツは動物を捕食するだけあって、リュックの部分は頑丈だ。
物を沢山入れただけで破れることはないが、敵として対峙した時もココは攻撃しても効果が薄い。
なので、倒すときはリュックの部分ではなく、茎を魔法で切るのが一般的だ。
勿論、何度も倒してきた敵だから余裕で倒せた。
それと、倒す次いでに連射の練習台になってもらった。
倒すと、リュックから消化液や誘引液を出すことはなくなるから、元々付いている液体を洗い流す。
その後は背負う側の四隅に尖った石で穴を開け、蔦を括り付ければ、安心安全のリュックの完成だ。
とても便利な植物である。
腹が減ったので、生で食べられる物は幾つか食べた。
サラダは好きなので大丈夫だと思ったが…
結果、僕はドレッシングのありがたみを知ることになった。
それでも、蓄えが無いし、リュックも作れたので、多めに食料を調達した。
食糧調達を終えたのにまだ帰らないのは、ある木を探しているからだ。
今後その木が必要になる。名前は「リピアの木」。
「リピアの実」と呼ばれる、赤い木の実が成る。見た目や味は殆どサクランボだ。
食べると体力がほんのり回復する効果がある。
なので、回復薬などの調薬素材として良く使われる。後は、動物の餌としても人気な事から、罠狩でも良く使われる。
この他にもまだまだ使い道の多い便利アイテム「リピアの実」は欠かせないーーー
(ーー?)
北に行こう。
北に僕に必要なものがある。
そんな気がした。
それから暫く北に向かっていった。
「うっ…!」
なんだこのにおいは!
なんだか血の様なにおいがする…。
拠点から北東に大体2kmのところか。
においの発生源の方向には街道の様なものがあったが、それだけでは無い。
「あれは……!」
荷台が2台ある馬車があった。
だが、馬はおらず、車体はボロボロになって倒れており、辺りには血のにおいが漂っている。
…辺りに生き物の気配は無い。
近づいてみよう…
「これは酷いな…」
残骸の中に、矢が刺さり、肩から腰にかけて縦に切り傷がついた男がいた。
着ている服から見て、おそらく御者だ。
治療はもはや意味を成さないだろう。
矢が刺さっていることと、荷台の損傷が少ないことから、盗賊か山賊辺りの仕業だろう。
放置していても邪魔になるだろうから、残骸を身体強化も使って、徐々に街道の外に運ぶ。
ゲームでも、こんな仕様はあった。
だが、今度はゲームじゃない。
現実だ。
今の僕じゃ、この御者の様になってもおかしくは無い。
そう思うと、とても怖い。
「…強くなろう」
心からそう思った。
ーーーーーーーーーー
「
御者は火属性の魔法、
その後に荷台に向かう。
山賊や盗賊に襲われた馬車の荷台にあるものは、見つけた人が使ってあげることで供養する、と言った風習がある。
幾つかを有り難く使わせてもらおう。
荷台の中は酷く荒らされていた。
金目の物は片っ端から掻っ攫われていた。
だが、衣服が奪われずに残っていた!
ずっと服がダサくて仕方が無かったから、何着か貰っていこう。
それと大きな布も布団替わりにするために貰っていく。
もう一つ荷台があるのだが、荒らし方が他とは違う。
扉がないのだ。
おそらく、吹き飛ばされたのだろう。
扉に結界も貼られていた様に見える。
中を見ても何も無い。
一体何があったのだろうか。
ーーーーーーーーーーーー
街道を後にし、拠点に帰る。
途中でリピアの木を見つけた。
沢山あったので、沢山収穫した。
だが、北に向かうと本当に必要なものが大抵集まった。
どうして突然北に行こうとしたのだろうか。
勘ではなかったと思う。
誰かが教えてくれた?
でも、周りには誰も居なかったし……
そんなことを考えていたら拠点に着いた。
集めた物をまとめる。
(別にいいことならいっか。)
どうしようも無いので、今は放っておくことにした。
そのゲームで「神」と呼ばれし男、ゲームの世界で自由に生きる。 けー(ねこ) @ke-cat
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