第3話 ゲームの神、作業する
付与が成功したので早速斧を試そう、と思う気持ちを抑えて周りを見て回る。今後住む場所を決めるのだ。今木を切り倒しても、木を持って歩き回ることは流石に出来ない。それに、一瞬で切れるわけでも無い。時間と資源の無駄になってしまう。それなら、木はそこらに沢山生えているので、家の近くの木を切り倒す方が効率が良いと言うものだ。
「取り敢えず、岩場の周りを見てみるか。」
岩場が近くにあると、何かと便利だ。そして、岩場には大体…
「あった。」
洞窟があるものだ。入口は僕と殆ど同じくらいの高さのアーチがかった三角形をしている。序盤は洞窟を拠点にするのが僕流だ。一から作るより楽で、外敵から身を守りやすい。だが、既に生物が住み着いている場合も多い。そこが攻撃的な動物や魔物の巣なら、気づかれると襲われてしまう。…まぁ、生物の気配を探ればその洞窟が安全かどうかは直ぐにわかるがな。
「この洞窟は…生物の気配は無さそうだな。」
覗いてみると、中はそれなりの広さがありそうだが、真っ暗で見えない。僕は中に入り『
「おぉ…。」
中は思った通り広く、生活するには十分だった。湿っぽく無いし、住み心地も良さそうだ。
「決まりだな。」
今後の拠点は決まった。もっと探し回ると思っていたから、嬉しいと言うか、拍子抜けと言うか…そんな気分だ。
ーーーーーーーーーー
拠点が決まったので、今度こそ斧の試し切りだ。腰に蔦で縛り付けていた木の枝等を置き、外に出て森の方へ歩く。
「これにしよう。」
近くの直径20cm程のの木の前に立つ。切り始める前に、魔法を一つ使っておく。使うのは『武器強化』と呼ばれる魔法だ。持っている物の能力を、魔力を消費して一時的に強化するのだ。それが武器なら威力が増し、道具なら効率が上がる。とても便利な魔法だが、今の僕はまだまだ弱いので、魔力は直ぐに底をついてしまうだろう。それでも使うのは、結構な時短になるからだ。無くなった魔力は、木の残りの部分を切っている間に回復するだろう。目を瞑り、集中する。魔力を斧に纏わせるイメージで魔法を発動させる。
「『武器強化』!」
斧が魔力を纏い、白く光る。それと同時に魔力がどんどん減っていく。ぼーっとしていたら直ぐに魔力が切れる。僕は直ぐに斧を構え、
「ふっ!」
という声と共に振り下ろす。
ガッ!ガッ!ガッ!
三度切りつけたところで、光が弱くなり、消えた。魔力切れだ。それと同時に、全身に疲れが押し寄せてきた。全力で運動した後の様に疲れている。魔力が切れると疲れるって設定だったけど、思ったより疲れるぞ。木の方は…三分の一くらいまで切れている。斧の方は壊れる気配は全くない。簡易とはいえ、魔法を付与してあるし、武器強化も使った。武器強化が切れた今でも、強度で言えば鉄くらいにはなっている筈だ。よしよし。いい感じだ。…少し休憩したら再開しよう。
ーーーーーーーーーー
少しの休憩したので、木こりを再開する。もう一度斧を構え、リズム良く振る。ゲーム内ではタイミング良く斧を振る事で木を切る効率が上がった。僕はタイミングを覚えているので、現時点での魔法を使わない場合の最高効率で作業が出来ているはずだ。
数分後ーーー
メキ、バキバキキ…バタン
音を立て木が倒れる。残り3分の二とはいえ、切れ味は石のままなので、まあまあ時間がかかったな。それでも、『武器強化』のお陰で大分時間の短縮になった。
「さてと。」
この木を使える形にしないとな。
先ず、枝を落とす。邪魔だからな。落とした枝は別の何かの持ち手だったり、燃やして焚き火をしたりする時に使う。魔力も回復したし、枝を魔法で落としていく。
少しだけ木から距離を取る。身体に巡る魔力の流れを意識し、手に魔力を集める。放つのは風の
(いくぞ!)
「『
手から魔法で出来た風の刃が放たれる。
スパスパスパッ‼︎
と枝が5,6本飛ぶ。どうやら、上手くいった様だ。この調子なら直ぐに終わるが、また魔力切れを起こしそうだ。他の魔法も使いたいので、残りの枝は斧で切り落とし、蔦で縛って持って帰る。
さて、先にこれを拠点の近くに持って行きたいが、小さめとはいえ木だ。普通に運ぶのはとてもシンドイ。と言うか無理だろう。そこで今度は、『身体強化』の魔法を使う。これを使うと、魔力で自身の身体を強化し、運動能力や防御力を底上げすることが出来る。魔法発動の為、全身に魔力を巡らせる。
「『身体強化』!」
魔法を発動させると、身体が軽くなる。両手で木を掴むと、軽くとはいかないが、持ち上がった。まぁ今はこんなもんか。『武器強化』程では無いが、魔力がだんだん減っていくのが分かる。また魔力切れを起こすのは流石にマズイ!
「急げ!」
拠点の近くて良かった。直ぐに入り口近くに木を置いた。魔力切れは起きずに済んだ。
と言っても、何か出来る魔力はない。さて、何をするーーー
グウウゥゥゥゥ…
……そう言えば、コッチに来てからまだなにも食べてないな。
「魔力が回復するまでに食べ物でも探すか。」
誰かに聞かれた訳でも無いのに、なんだか恥ずかしかった。
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