第31話 エピローグ

盛大なたこ焼きパーティーは終わり、皆が寝静まった深夜。

誰もいない草原で、俺とリリア、アイコ、ピーちゃんはこっそり家を抜け出して集まっていた。いわゆる二次会というやつである。


「あははは、何が魔女じゃばかたれい。私は自由だぁー、魔女なんでこわくないです、ぐひ。こっちには化け物幼児が控えてるんですっ。ぐひ」


(ガーハッハッハ、よく言うたぞアイコ。お主も見る目があるにゃー)


(たこ焼きというのは冷めても美味いのだな)


泥酔したアイコとピーちゃんを無視して、俺は残り物のたこ焼きをガツガツと食う。


「まさか、クラーケンが見た目だけでなく味まで完璧な生物だったとは……感激ですっ。ぐひ」


「うわやめろ」


酔ったアイコが、食事中の俺にもたれ掛かってきて、素手で最後のたこ焼きを奪いモグモグと食べてしまった。コイツ……あんなにクラーケンを殺すなとか言ってたくせに。どうやらモンスターへの愛と食事は完全に別腹らしい。


(ところで、こんな時間にどうして集まってんの?)


俺とリリアは仲良く我が家のベッドで寝ていたら、アイコとピーちゃんに起こされて連れてこられた。話たいことがあるから付き合って欲しいという事だったが、一体なんだろう? 俺もリリアもまだまだ睡眠を欲するワンパクボーイ&ガールなのに。


(我もアイコもこの先、主がなにを目指してるのか気になってるのだ)


(目指す? なんでそんなのが気になるんだ?)


というか、特に目標なんてないのだが。あるとすれば、それは家族との幸せな暮らしだけ。他に望むものなんて別にないのだが。


「だって気になるじゃん~。君はそんなに強いんだよ? ぐひ。ドラゴンだって従えてるし、何故かその幼馴染も訓練してるみたいだし~? なにか目的があって行動してるんじゃないのぉ~?」


とアイコは言うが、そんな期待の籠った目で言われても、全部成り行きで決まったことで、目標なんて無いんだけど……


(我が主は常に1000手以上先をみていると言ってたしなっ。きっと我などには思いつかない壮大な計画があるはずさと、アイコと酒を酌み交わしながらそう話題にあがったのっだガハハハ)


んだよこいつら。ただの酔っ払いじゃないか。

1歳児を酒の席に呼ぶんじゃないよまったく。

しかし、目標か……そんなのはないとハッキリ言いたいけれど、ピーちゃんとアイコがワクワクしながら俺の言葉を待っている。とても言いずらい。助けてくれリリア!


隣にいたリリアにバトンタッチしようとすると、さっきまで眠たそうにしていたリリアまで、俺に期待を寄せるような表情とジッと見つめていた。お前まで俺を裏切るのか!


んー、これはなにか言わなければいけない流れだよな?

なんか……なんか、ないかなー。


(しいて言えば、今日のたこ焼きみたいな料理をいっぱい皆で食べたいな。母上や皆と一緒に楽しく美味しく食事がしたい)


「ええ~そんなこと!?」


不満そうにアイコが口をとがらせる。


「もっとさ~、折角強いんだから、もっとロマン溢れることいってよ。美味しいごはんが食べたいなんて、地味じゃないです?」


(馬鹿野郎。地味とか関係ないから! 美味しいごはんを食べて、家族が幸せそうにするのが一番幸せなことなのだ! そのためなら俺は何でもするぞ。おっ、そうだ。どうせなら、世界中にある全ての美味しい物をかき集めて、世界一豪勢なパーティーを開くぞ!)


「世界中って全ての国から料理を運ぶの?」


首をかしげて不思議そうに聞いてくるリリアに、俺は拳を握りしめて力強く答える。


(その通り! 世に散らばる美味しいグルメが全てが、我が家に集まるようにするのさ)


そうなれば、いつだって美味しいごはんが食べ放題だ。


(ガッハッハー、世界全てとは中々に壮大! それを実現するなら、小さな地方領主程度では不可能だな‼)


「たしかにぃ。最低でも大金持ちの偉い権力者とかならないと無理だよね、ぐひ。じゃあさ、もういっそ世界征服でもしちゃいますかー。ついでに世界中にいる魔女も全員ぶっころしてやりましょう。ルーク君が!」


(世界征服……よいではないかっ! 主に逆らう無謀な奴らは全員に、主に偉大さを分からせてやろうぞ。主こそ、世界の王に相応しい) 


「じゃあ私は、クーを守る騎士になる!」


「(おお~)」


リリアがそう宣言すると、ピーちゃんとアイコが拍手して歓迎する。


こらこら、お前達。勝手に人の行動を決めるんじゃない。俺が世界征服すると一言もいってないぞ。リリアもちゃっかり、酔っ払い達の乗らされてるし。


「はあ、めんどうみきれないね」


バカ騒ぎする二人と一匹を眺めて、深いため息を吐く。

今更、酔っ払いに何をいっても無駄だろう。どうせこの会話も朝には忘れてる。



けれど、権力と金を持ち、世界中の美味しい物を集めるという意見は案外気に入った。流石に世界征服とか、王になるとかは論外だが、家族友人のために、一肌脱ぐのもやぶさかではない。


どんな因果で没落貴族に転生したかは分からないけれど、生まれながらに手に入れていたこの『無限魔力』で金を荒稼ぎして、世界中の美味しい物を全てかき集め、貧しい我が家の食卓を彩るのも悪くないかもな。


「やすんではいられない。あしたからまた忙しくなるぞ」


馬鹿騒ぎする仲間達を見ながら、俺は新たな目標を胸に抱き、そうつぶやくのだった。




――――――――――――――――――――――――――――――


話のストックもなくなったので、一旦ここでこの章は終了させて頂きます。いままで読んで下さりありがとうございました。


次章のプロットは完成しております。

とてもゆっくりとになりますが、その内連載再開予定なので、引き続きお付き合いいただけると幸いです。

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没落貴族に転生したけどチート能力『無限魔力』で金を荒稼ぎして、貧しい我が家の食卓を彩ろうと思います~ 街風 @aseror-t

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