第3話 解析
聞きたいことは山ほどあるが、何を聞けば良いのか整理がつかない。
とりあえず、この声の主が誰なのかを聞いてみるか。
「あんたの名前は? あとあんたは何者だ?」
『私の名前はありませんが、型式はEV-2034Eと記録されています。他の型式は私をイヴと呼びます。主に世界軸からズレたりはみ出してしまった観測不能の未帰還者を、新たに観測可能となるよう再構築し、結果に見合った世界へと転送し、生涯をサポートさせて頂くことが私のプログラムです』
彼女?の名前はイブと言うらしい。
型式と言うだけあって、他にも同じイブは存在するのだろうか。
それに、世界軸のズレ、観測不能、未帰還者など、なかなか難しい言葉を並べてくるではないか。
まあ、何となく簡単にまとめればイブは、スマホのAIアシスタントみたいなものだろう。
しかも生涯サポート付きのお得プランだ。
「ちなみになんだが、俺は死んだのか?」
『いえ、死んでいません。死と言う表現も間違いではありませんが、正確には世界軸のズレに干渉してしまったため、存在が抹消されました』
存在が抹消…。
俗に言う、元の世界では誰も俺のことを知らない。
親でさえ産んだことを知らない。
いや、産まれた事実すら無いことになっているってやつか。
「なるほど…」
何となく頭では理解はできる。
一言で言えば不慮の事故。
もともと日本にいた頃、MMORPGゲームや異世界転生物のラノベを読んでいたおかげか、今の状況に対して落ち着くことができていた。
「ところでサポートと言ったが、具体的にはどんなサポートがあるんだ?」
『サポート機能と致しましては、言語管理のスムーズ化、地形把握のサポート、身体管理などが主になります』
「つまり、言語が通じない場合はイヴのサポートで会話が出来たり、地図も要らない、健康管理をしてくれるってことか?」
『はい、そのように考えてもらえると助かります』
なるほど、知らない土地で言葉が通じるのはありがたい。
ただ、一つだけ気になることがある。
「不明のエラーって…なんだ?」
そう、転送される前も、イヴが起動した時も彼女は不明なエラー一件と言っていた。
『…』
「…」
少しの沈黙。
『…それに関しては、恐らく身体的なエラーと感知しています』
「身体的とは?」
『えーっと…まあ、あれです』
おい、急に動揺し始めたぞ。
『この世界の身体的性能を、遥かに凌駕する身体の構造になってしまっています…』
『平たく言えば、世界最強です』
「それが事実なら俺にとっては悪いことではないのでは?」
世界最強。
男と生まれたからには、誰でも一生の内一度は夢見る「世界最強の男」─。
なんてセリフもあるくらいだ。
『ただ少し解析が進み判明したのですが、この世界では使用者の力量に見合った衣服や武器しか使用ができない模様です』
それはゲーム内でも良くある使用だな。
『そして解析の結果、現時点で貴方の装備できるものはこの世界に無い。と言う結果でした』
え、何も装備出来ない…?
「えっと…下着は関係ないよな?」
『…』
『申し訳ありませんっ!!!』
そのサラリーマン異世界最強ににつき ほっけのひらき @mariaholic
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