東京デビルズタワー/巨人伝説研究家<角田六郎>の事件簿6
坂崎文明
第1話 デビルズカフェ
東京デビルズタワー。
その巨大建築物は東京山の手線内に突如として現れた。
それは山の手内ほぼ全域を基礎としたピラミッドのような
その設計図はバブル期の某建設会社のものであったが、バブル崩壊と共に実現することはなく、陽の目を見ることは無いはずだった。
だが、3ヶ月前の深夜二時頃に、何者かがそれを一瞬にして実現してしまったのだ。
中の住民の行方は不明であり、自衛隊中心に捜索がつづいているが、特殊な金属で出来た塔を破壊する手段がなく、塔の入口さえ、まだ見つけられずにいた。
そこはその東京デビルズタワーがよく見える山の線外のオシャレなカフェである。
通称『デビルズカフェ』と呼ばれていた。
この『デビルズカフェ』は立ち入り禁止の危険地帯に指定される場所に立地していた。
そのために、一万数千年の歴史を持つ秘密結社<
「それで、
彼女は懐かしのミルクセーキを飲んでいる。
俺はというと、甘い甘いフルーツ牛乳を頼んだ。
助手の
「大変でしたよ。ビル・ガイツは化け物だし、遺伝子注射反対デモで市民と軍隊が衝突して、サンフランシスコは暴動になってましたよ」
飛騨は大きくため息をついてから沈黙した。
衝撃的な事件に巻き込まれると、意外と言葉が出なくなるんだよね。
わかるわかる。
俺もそうだったよ。
未来を予知する<未来眼>の持ち主だが、秘密結社<
ゆくゆくは秘密結社<
家系=連綿と続いてきた遺伝子なのだから当然なのかもしれないが、いや、全く大変な運命ですね。
あ、独り言だけど。
「それで、
いわゆるアルビノ、先天性色素欠乏症、白子症などと似ているが、彼女の場合、何か重要な事に気づいた際、ちょっと興奮してなるらしい。
詳しい仕組みはよく知らないけど、長い髪のなかなかの美貌の三十五歳の彼女が、なかなか結婚しない理由のひとつなのかとも思う。
「ベアトリスさんが結婚相手を探してるので、こういう席をセッティングしてみました」
こんな危険地帯のカフェで合コンを開催するとか、流石、<政略結婚の魔術師>と呼ばれる池上緋美子である。
秘密結社<
長テーブルの男性側には転生して復活した真田幸村、石田三成、メガネ君、コスプレかよと突っ込みたくなるサイクローニ・カノンという黒衣の騎士、安東要、そして、俺、巨人伝説研究家の
戦国武将に、オタク、中世風の騎士、元総理大臣、巨人伝説研究家と何ともジャンルがバラバラだ。
女性陣は幸村の向かい側にシスティーナ、ガブリエル、フェアリー・フェリス、魔女ベアトリス、
天使、魔女、一応、普通の人間という、あり得ないぐらいの美貌と可愛さの豪華なメンバーとは言えるが、果たして、彼女たちと結婚することが幸せかどうかは疑問符が付かざる負えない。
「飛騨君は今回、オブザーバーですよね?」
最近、飛騨の相棒役を務めてる魔女ベアトリスが池上緋美子に流し目を送りながら念を押す。
これは「私の相棒に手を出すな」というやんわりとした
「まあ、一応、そうだけど、男女の縁ってわからない物なのよ。そこら辺は察して」
池上緋美子は魔女の恫喝を何とも曖昧な懇願で華麗にかわした。
なかなかやる。
「まあ、いいわ。メガネ君、久しぶりね」
魔女ベアトリスはパラレルワールドの戦国時代で真田幸村、石田三成、織田信長などを殺害、元総理大臣の安東要、メガネ君とも宿敵であるはずなのに、どういう神経なのか、最近、秘密結社<
その辺りの裏事情は何となく聞いてるが、めんどくさいので説明は割愛する。
「お久しぶりです。ベアトリスさん」
だが、意外にもメガネ君はにこやかに笑顔を返した。
「おお、メガネ君も大人になったね」
「あなたのお陰ですよ。ベアトリスさん」
少し大人げない棘が声に混ざっている。
でも、ちゃんと抑制が効いている。
「今日はよろしくね」
「どうせ僕は対象外でしょう?」
「一応、年上希望なので、合格なのは三人ぐらいかな。正確にはひとりか。いや、もうひとりいるかも?」
魔女ベアトリスさんの実年齢は1000歳以上(あくまで推定)なので、合格になった方は真田幸村、石田三成(異世界の戦国武将なので年齢不詳)がギリセーフ、黒衣の騎士サイクローニ・カノン(一万二千年前のムーア王国から参戦のため)が年上確定であると思われる。
もうひとりというのが意味が分からないが。
「ちなみに、巨人伝説研究家の方も対象に入ってますので、油断しないように!」
幹事の池上緋美子が意外な言葉を放ち、俺の心臓に突き刺さった。
「なんでまた! あり得んでしょう。年上じゃないでしょう? なあぜえ? なあぜえ?」
思わず発狂してしまう。
「いつか……、分かります」
池上緋美子が意味深な謎かけをして、世紀末的風景の中で人外魔境的な合コンがスタートしたのでした。
東京デビルズタワー/巨人伝説研究家<角田六郎>の事件簿6 坂崎文明 @s_f
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