テスト投稿連載にするかもしれない

メンママン

戦国ものテスト


「山萩彦さまー!どこにいらっしゃるか!」


のどかな山に老人の声が響き渡る。

嗄れているが腹の底から出ているその声はとても力強く、老人の頑強さと鍛え抜かれた精神と肉体を実感させた。


その様子をこっそり覗き見ていた子供がひとり。

袖無し小袖に野袴のよく日に焼けた子供だ。名をつくよと言う。

一見庶民のように見えるが、着物の上質さとさりげない所作がその子供の身分を窺わせた。

顔だちはあどけなく、ふくふくとして赤らんだ頬が愛嬌を感じさせる。その中心で輝く翡翠色の瞳は悪戯っ子のようにキラキラと輝き、慌てふためく父をじっと見つめていた。思わず頬を綻ばせる。

そして、クスクスと笑いながら後ろを振り返った。


「お萩、父上が呼んでるよ」

「知らぬ。今は忙しい」

「お萩にしたら祭りより難しい本の方が大事なのは分かるけどさ……父上や他の者からしたらそういう訳にいかないのだよ」


つくよの背後の岩陰にて手元の本を読み耽っていた少年、お萩━━ 山萩彦は子供らしからぬ深い溜め息と鋭い眼光でギロリと月夜を睨み付ける。

上質な反物で作られた水干と指貫袴。

見るからに″何らかの催し物から抜け出した良いとこの子″だ。

崖下の老人を騒がせている犯人その人である。

シミのない色白の肌に小鹿のように細い手足に真新しい肉刺がポツンとある掌。

いつの間にか隣に移動したつくよに少し似た顔立ちとふくふくした頬。

しかし、その瞳は三白眼で幼児らしからぬ目つきの悪さだ。


「何が言いたい?ここを使えと言ったのはお前だろう」

「そうだけどさ、今日の祭りまで抜け出すのはどうなのって話さ。僕、流石に顔出しすらしないつもりだとは思ってなかったよ」




「我に便乗して抜け出したお前がよく言えるものだな」

「別に僕が居なくても兄さまが何とかしてくれるさ。それに、奉納の舞って堅苦しくて作法も決まり事も多くて型が凝る」


フンっと鼻を鳴らす山萩彦につくよはあっけらかんと答えへらりと笑う。


「ならば我も父上と兄上達に任せる」

「そっかあ。じゃあ仕方あるまい」

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