三題噺・灰・透明・小鳥

四つ目

灰・透明・小鳥

 灰の舞う空を見上げ、息苦しい中で浅い呼吸を繰り返す。

 何処からか鳥の声が聞こえ、視線を動かすと小鳥が飛ぶのが見えた。

 逃げ遅れたのか、それとも動けなかったのか、どちらにせよどんくさい。


 タタタタタと音がする中、その被害に遭うのは人間だけでは無いのだから。


「・・・どうでも良い事しか頭に浮かばない・・・死ぬ前ってこんな感じなのか」


 撃たれた所が動かない。重症なせいか痛みも感じない。

 何だか熱い気がするってぐらいだろうか。

 余りに大怪我だと痛みが無いのは本当だったんだ、なんてのんきな事を考える。


「・・・放置されたのか?」


 音が若干遠ざかっていくのを感じ、とどめを刺されなかったのだと思った。

 どちらにせよこのままでは死ぬだろうから、早いか遅いかの違いでしかないけれど。

 倒れた者はもう居ない扱いなのかもしれない。居るのに居ない。透明人間かな?


「あー・・・タバコ吸いたい」


 一応持っているんだけど、残念ながら腕が動かない。

 片腕は吹き飛んじゃってるし、もう片方は穴だらけだ。


「・・・くっだらない人生だったな・・・終われるならそれも良いか」


 子供の頃から銃を持って、気が付けば山賊をやって、軍から物資を奪った事もある。

 そんな人間の結末としては、まあこれが妥当な所だろう。

 どこの誰にも看取られず、森の中で穴だらけで死ぬ。ははっ。


「・・・なんだ、お前が看取ってくれるのか?


 先程見かけた小鳥が、間抜けにも戻って来たらしい。

 しかも何故か俺の胸の上に止まり、俺を見つめて首を傾げている。

 まだ安全になった訳じゃないのに、やっぱり間抜けな鳥だな。






『力が欲しいか』






 突然そんな声が聞こえてきた。え、何これ待って。


『ならばくれてやろう』


 え、いや、俺答えてないけど。待って待って、何突然。どうしたのこれ


『すべてを滅ぼすが良い!』


 誰もそんなこと望んでねぇ!!


『ギャオオオオオオオオオオオオオ!!』


 待って待って待って。なんで俺巨大化して叫んでんの。

 つーか原型が無い! 怪物! 怪獣! 後勝手に動く!

 あ、なんか人に気が付かれ・・・痛い痛い痛い! また穴だらけにされてる!!


『ギャオオオオオオオオオオ!』


 あ、俺強い。尻尾で一掃した・・・尻尾!? 何で!? 何で尻尾生えてんの!?

 もう確実に人間じゃないじゃん! 後自由意思ないの酷すぎない!?


『さあ、行け』

『ギャオオオオオオオ!』







 この後滅茶苦茶ミサイル撃たれた。


 勝った。

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三題噺・灰・透明・小鳥 四つ目 @yotume

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