学ぶべき歴史の棄てられた場所

 かつて戦場だった地を散歩する、まだ何も知らない少女のお話。

 こうはっきり「何も知らない」と言っては失礼ですけど、しかしそれは「大人たちによって意図的に隠された物事がある」ということで、要はゴリゴリのディストピア小説です。

 打ち捨てられた兵器の数々に、お世辞にも透明とは言えないディストピアな社会。
 こうして現にそこに〝ある〟ものたちは、およそ平和や安寧とは程遠いものばかりです。
 しかしそれらが彼女の視点を通して語られることで、なんとなくポジティブな手触りで包まれるような、この感覚というか読み心地が大好き。
 ギャップ、という言い方だとちょっとニュアンスが違うんですけど、でもそんな感じの効果のような。

 約3,000文字と短いこともあり、ここで多くを語ってしまうのがもったいないと感じる作品です。
 サクッと読めちゃう分量ですので、タイトルや説明文に何か感じるものがあった方はぜひご一読を。