討ち斬りロワイヤル

消毒マンドリル

プロローグ

 「僕の『リュウオウクエスト』が打ち切り…ですか…」


 天武 礼(てんぶ れい)、22歳。漫画家。

 彼は今、非情な宣告に声を震わせて返答した。

 

 「そうだよ。編集部の皆と話し合った結果だよ。」

 「わかりました…せめてその、理由もお聞きかせして欲しいのですが…」


 天部の問いに編集長「島酉(しまとり)」は淡々と言い放つ。


 「君の漫画は…普通だ。特に悪いところはない、君自身も真面目で問題も起こさず原稿も締め切り2日前には必ず出してくれる。だけど…『王道』すぎてつまらないんだよ。展開は読者たちの予想通りだし、キャラデザインもシンプルで受け入れやすいんだけど魅力がない。」


 椅子にどっかりと座り込む姿勢から体を前に出し、両手を組んで天部を見据える島酉。

 その目には諦めの感情が表れている。


 「時代が進むにつれて真新しさとインパクトのある展開がより求められるのが漫画なんだが、君の描くものにはそれがないんだ。ありきたりすぎる。」

 「はい…」

 「よって、君の「リュウオウクエスト」は打ち切られる事が決まった。理由はこれで以上だ。」


 理由をすべて聞き、がくりと肩を落とす天武。

 「リュウオウクエスト」に自身の持てる物の全てを捧げていた彼からすれば島酉の発言はあまりにも突き刺さった。


 「俺も何度か君に改善案を出し、君もその案通りに漫画を描いてくれた。しかし、変わらず魅力はないまま。…よって、『リュウオウクエスト』は打ち切ることに決めた。」

 「そうですか、分かりました。」

 「ハッキリ言って天武君は仕事人としては優秀なんだが、作家としては向いていなんだ。そんな君の作家としての才能を引き出すべく俺も手を尽くそうとした。しかし、編集部は待ってくれなかった。」


 島酉は椅子から立ち上がり、窓の外を遠い目で眺める。


 「こればかりは早いうちに君を育て上げられなかった俺の責任だ。君は悪くない。」

 「すみません…」

 「二度も言うが天武君は悪くない。そして、俺はその責任を取るべく…」


 カシャリと乾いた音を響かせ、振り向いた島酉が懐から取り出した銃を向けた。

 あまりに突飛もなく非現実的な出来事に天武は固まり動けなくなる。

 何故、島酉さんがそんなものを持っている!?そして僕は死んでしまうのか!?

 不測の事態で思考が追いつかない彼に向け、島酉は引き金を引いた。

 

 「あー…うっ…」


 銃弾が命中し、椅子に座っていた天武はどたりと上半身を机上に突っ伏した。


 「君が「新たなる場所」で活躍でき…そして生き残れるように手助けしてやろう。」

 

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