時を越えて紡がれる、美しき恋物語。

記憶をなくした女性と『能面の直文』さん。
両者の目線から語られ、糸がするりとほどけていくように彼女の正体が明かされていく本作ですが、物語進行の違和感のなさもさることながら、登場人物たちの優しさに胸を打たれたり、モチーフの散りばめかたに唸ったりと、とても楽しく拝読させていただきました。
経験を重ねるうちに失われていく純度の高い恋心をそっと思い出させてくれるような、味わい深さがありました。
前日譚としても、読み切りとしても、非常に完成度と満足感の高い作品です。

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