10.死呼ぶ霧
「これが最後の質問だ。
これに答えれば、俺はあんたのついたウソを
今回だけは許してやる。もちろん次はない。」
血と泥にまみれた顔に、水瓶の水をかぶせた。
老人はすでに寒さと死の恐怖に、
奥歯を鳴らして震えている。
「このまま土の中で犬に食われて引退するか、
俺に仲介の仕事を託して幸せに引退するか。
好きな方を選べ。」
老人は顔から汁を流し、何度もうなずく。
匂いはウソをついていない。
ロンドンはこれからも労働者が増え、
産業革命は大勢の死者を生産し続ける。
残念なことにこの仕事は、
これからもっと忙しくなる。
俺はとうとう堪えられなく笑った。
人間、仕事は選べない。
さて、俺に貴族のマネは似合うだろうか。
(了)
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