🐢浦島太郎の生まれ変わり

オカン🐷

浦島太郎の生まれ変わり


 ねえ、ねえ「浦島太郎」の話、知っとる?

 

 うん、知っとうよ。

 

 んじゃ、聞かせてみて。

 

 まずは、むかーし、昔から始まるんや。

 

 たいてい、そうやわな。

 

 浦島さんちの太郎君が、浜辺で子どもたちに苛められていた亀を助けたんやろ。

 

 そうや、そうや。正義の味方ってわけや。


「これ、これ、君たち亀を苛めたらかわいそうじゃあないか」言うて「代わりにこれをやろう。だから放しておやり」と、おっかさんがこさえた吉備団子を子どもたちにやったんやろ。


 どうも話が変わってきたような気がするけど、まあ、ええわ。ほいで、どうなってん。


 それからしばらくして、助けてくれたお礼にといって、亀が竜宮城へ連れて行ってくれるんや。


 ふん、ふん。


 竜宮城には乙姫様やらべっぴんさんがようけおって、まあ、いわばハーレムやな。  

 毎日、毎日、ご馳走をよばれて、楽しいときを過ごしていたんや。


 ご馳走って何かいな?


「鯛や鮃の舞い踊り」って、歌にもあるくらいやから、魚のお造りやなんかやろ。


 雲丹や鮑は、ないんかい?


 そこまでは知らんわ。


 何や知らんのかい。まあ、ええわ。そいでどうなってん。

 

 そうやって贅沢三昧で暮らしていた太郎君、三年ほどして「はっ」とわれにかえって、一人残してきたおっかさんが心配になり「もう帰る」と言うたんや。


 やっと思い出しよったんかい。


 あれほど乙姫にようしてもろたのに、いざとなると母親のほうを選んだわけや。結婚しとったとしても姑の肩を持つ。乙姫さん苦労しましたで、あんさん。


 なんや、嫁姑問題か。えらい深刻な話やな。


 乙姫は「よ、よ、よ」と泣き崩れ「決して開けてはなりませぬ」と、玉手箱を土産にくれてん。


 開けてあかんもん、もろてもなあ。


 そいで、村に帰った太郎君、実際は何百年という月日がたっていて、おふくろさんどころか、だーれも知った人がおらんようになっていて。


 ほー、ほー、ほいで。


 途方に暮れた太郎君、玉手箱を開けよってん。


 開けてしもうたんか。で、何が入っててん?

 

 白い煙がモクモクと出てくると、太郎君、真っ白い髭ぼうぼうの爺さんになりよってん。

 

 これは嫁姑問題の逆襲ってやつやわな。


 そうやねん。乙姫やりよってん。


 んで、そのあとの話を知っとうか?

 

 太郎爺さんは、やがて亀になるんやろ。


 何や。知っとるんかい。そやけどな、、その後まんだ続きがあるんやで。

 

 へえー、どんな、どんなん。


 亀になった太郎爺さんは、毎日、毎日、竜宮城のことばかりを思い出していたんや。また行きたいなあ。乙姫様に会いたいなあって。


 ふん、ふん。おっかさんもおらへんようになって、だーれも知っとるものがおらんかったら、そりゃ、つまらんわな。そやけど勝手な男やで。乙姫をほかしたくせに。

 

まあ、そう言うたりいな。ほんで、来る日も、来る日も、亀になった太郎爺さんは、浜辺に行ってん。

 

 浜辺で何しとるんや?


 浜辺をな、あっちへ行ったり、こっちへ来たりしてるんや。


 何を思うてや。

 

 苛めてくれる子を探しているんや。


 何とけったいな。苛めっ子を探しているとな。


 苛めっ子はいねか、悪い子はいねか、ってな。


 そりゃ、ナマハゲやがな。


 そうして、苛められているところを助けてくれる人がおったら、そのお礼にまた竜宮城へ行けるやないか。


 なるほど、そういうわけか。


 浜辺をウロウロしとる亀を見かけたら、それは浦島太郎の生まれ変わり、という話や。

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