第4話 ちょっと普通じゃない、和歌山のちゃんぽん

 Twitterを眺めていると私のタイムラインには、よく麺料理の画像が流れてきます。多くは多種多様なラーメンの画像なのですが、それ以外にもうどんであったり、日本そばであったりします。麺料理の好きな人多いですよね。


 日本全国を回ると、その土地で人気のラーメンなんかはたくさんあるのですが、中にはちょっと普通じゃないというか、こんな麺料理があったんだと思わされることがあります。今回は日本一周に出るまでは知らなかった、麺料理を紹介します。


「ちゃんぽん」と聞いて、どういった麺料理を想像するでしょうか? 多くの方は長崎ちゃんぽんのように、ラーメンに海鮮や野菜を乗せたものを想像すると思います。長崎ちゃんぽん以外にも、近江ちゃんぽんとか八幡浜ちゃんぽんとか、その類型ですね。


 私が和歌山県田辺市で食べたちゃんぽんは、それらとは全く違ったのです。その存在を知ったのは、道の駅のチラシ。ちゃんぽんの名称から受けるイメージと全く違った麺料理が紹介されていました。それを見てこれはぜひ食べなければと、その料理を扱っているお店に向かったのでした。


 そのちゃんぽんが食されているのは、田辺市でも江川地区だけとのこと。江川は小さな漁港町という風情で、扱っているのはお好み焼きをメインとした鉄板焼屋です。私が訪れたのは、「はまちゃん」という小さなお店。お店の中は、大きな鉄板がバーンとあって、そこでお店の方がお好み焼きを焼いてくれるスタイル。目の前で作っていただけるので、作る工程はすべて見ることができます。


「ちゃんぽん」を注文すると、野菜と肉を炒め、そこに投入されるのが中華麺とうどん、それぞれ一玉ずつ。これを混ぜ合わせて炒めるわけです。まさしくちゃんぽん。天かすや鰹節を加えた後に、となりで焼いた卵に乗せさらに混ぜます。最後に(多分、お好み焼きにも使う)ソースをからめて終了。作り方としては、焼きそばと何ら変わりません。麺が中華麺とうどんというだけです。さて、食してみると、


 ンマーイ!


 焼きそばと焼きうどんを一緒に食べるとどうなるか? その答えがここにあります。違う麺が混ざっていても、味がソースで統一されているので、変な違和感はなく、食感の違いだけが楽しめます。細い中華麺ともっちりと太いうどんの麺が混在する面白さ。想像を超え、めちゃめちゃおいしいというわけではないが、ちょっと脳がバグる面白さがあるというか……


 後に調べてみたのですが、このような中華麺とうどんのちゃんぽんは、兵庫県姫路市でも食べられているとのことです。当時のWikipediaには、姫路と田辺でこのような料理があると書かれていたのですが、2024年現在のWikipediaには「ちゃんぽん焼き」が姫路のローカルグルメとして紹介されているのみで、田辺市江川については言及がなくなりました。


 田辺の観光協会のHPでは紹介されているのですが、提供されているのが田辺市の中でもごく一部のみで食されているので、ほとんど知られていないと思われます。こういった特定の地域のみで食べられている料理に出会えるというのが、旅の楽しさであります。


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日本全国ローカルグルメめぐり けたじぃ @keta_g

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