大阪の古書店を巡るひとりの男がいる。彼が探すものは名書だが、文学作品ではない。ライトノベルやジュブナイルといった、少年少女をターゲットとしたエンタメ作品群だ!
というわけで、著者さんの古書店巡りライフを描く本作、最大の特徴はその語り口です。独白的な文章は平らかに、しかし叙情的に本の内容を語り、古書店の有り様を語り、自身の感慨を語る。著者さんが掲げられている某おひとり様グルメコミックの風情が文章として昇華されていればこそ——本当に独り言を聴いているかのような、それでいて「特定の空間の持つ情感のにおい」がしみじみ感じられるのがおもしろいのですよねぇ。
それに、作中で著者さんが発見された本と作者さんにまつわるお話も実に興味深いのです。内容はもちろんですが、時代性からの考察や感想、これがまたうるさくないのに細やかで濃やかで。本というものがお好きな方なら、誰しもうなずかずにいられません。
本好きによる本好きのための一作、ぜひともご一読くださいまし。
(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=高橋 剛)