第3話 岡山デミカツ丼と加古川かつめし
自転車日本一周最終盤、九州からゴール奈良県に向けて、中国地方の瀬戸内海沿いを走りました。この頃は半年以上にわたる日本一周にも疲れ、11月に入ったこともあり寒い日も多く、体調がすぐれない日が続きました。早く家に帰ってゆっくりしたい、これが本音でした。そういった事情もあり、旅も楽しむというよりは、クリアする為という義務的な感じになっていました。そんなときに食べたローカルグルメの話です。
岡山県岡山市のローカルグルメ、デミカツ丼。名前からおおよそ想像できると思いますが、一般的な卵とじのカツ丼とは違い、ソースカツ丼のデミグラスソース版と考えていただければよいかと思います。
1931年創業の老舗とんかつ店「味司 野村」が発祥で、初代店主が帝国ホテルのドミグラスソースを食し、「その味を地元の人たちに食べてほしい」という思いから誕生したそうです。(岡山観光webより)
このデミカツ丼、特別決まりがあるわけでなく、トンカツにデミグラスソースが基本となっているだけで、お店によって特徴はそれぞれ。発祥の店ではご飯の上にキャベツを乗せますが、キャベツを乗せない店もあります。デミグラスソースの味もお店によってそれぞれです。
私が食べたのは、岡山城近くにある「食堂やまと」というお店。デミカツ丼については詳しく調べずに、観光に立ち寄った岡山城近くのお店というだけで、こちらのお店を選びました。お店はちょっとおしゃれな「町の食堂」という佇まい。座席の配置などつくりは「町の食堂」ですが、雰囲気は洋風でちょっとおしゃれな感じ。
それでメニューを見ると、どうやらこのお店、創業以来続く中華そばが看板メニューのようです。それ以外にはカツ丼、カレー、ハヤシライス、焼き飯、シチューにオムレツ、さらにワインを扱っているし、和洋中何でも来いといった、いかにも町の食堂といったところです。
注文するのはもちろんカツ丼。このお店ではもちろんデミカツ丼なんてよびません、ただの「カツ丼」です。しばらくしてでてきたのは、ご飯の上にカットしたトンカツ、ちょっと赤みが強いデミグラスソースがかかり、その上にグリーンピースがトッピングされています。
まずはデミグラスソースのかかったカツをひと口。デミグラスソースはハヤシライス的なものとは違い、ドロっとしていてケチャップ感が強いかな。福井のソースカツ丼のようなあっさりソースではなく、もうちょっとコッテリした感じ。このお店ではドミグラスソースと呼ばず、ドビソースと呼ぶそう。カツとの相性は良くて、とんかつにかけるソースとしてはこれは良い。ただ、ソースのかかったご飯を食べて、むぅとなってしまった。
普通のデミグラスソースなら、ハヤシライス的なものとして良いかなと思うのですが、ちょっとケチャップ感が強くて、思っていたのと違いました。味としては悪くはないのですが、私好みではなかったということです。
岡山のネットカフェで泊まった翌日、100kmくらい自転車で走って、加古川市のローカルグルメ・かつめしを食べることにしました。かつめしは丼ではないものの、ご飯に牛カツを乗せてデミグラスソースをかけたもので、牛カツとトンカツの違いはあれどデミカツ丼に似たものです。岡山市と加古川市は100kmくらい離れているのに、似たような食べ物があるというのが面白いのです。しかもこの間には似たような料理がなくて、どちらも局地的にあるのが興味深いです。
かつめしは終戦直後の1947年に加古川の「いろは食堂」で、当時ビーフカツレツをだす際に皿が足りず、ひとつの皿に、ご飯、ビーフカツレツを盛り、たれをかけたことが始まりとされるとのこと(Wikipediaより)。その後、手軽に食べられることから加古川市内の食堂や喫茶店に広まり、地域の名物料理となったそうです。かつめしの呼称が定着していますが、カツライスと呼ぶこともあるようです。
食したのは、かつめしのチェーン店である「本家かつめし亭」。ネットで調べると、かつめしもお店によってそれぞれのアレンジがあるのですが、このお店はわりとプレーンというか、変に小細工していない潔さが感じられたので、こちらのお店を選択しました。
注文後に出てきたのは、黒いお皿にご飯が盛られ、その上に叩いて薄く伸ばした牛肉のカツ。デミグラスソースがたっぷりとかかり、脇にはキャベツが添えられている。まずは牛カツを。ンマーイ! サクッとした衣、あっさり目の牛肉に、コクのあるデミグラスソースがおいしい。やっぱりソースの味が決め手か。
ソースのかかったご飯を食べる。うむ、おいしい。ライス+デミグラスソースということでいえば、これはハヤシライス。だから、かつめし=牛カツ乗せハヤシライスといってもよいわけです。個人的にポイントに感じるのは、トンカツでなくて牛カツということ。ハヤシライスにはやはり牛肉だと思うのです。
そこでふと思ったのです。岡山で食べたデミカツ丼はトンカツにケチャップ感のあるデミグラスソース。トンカツと相性は良かったものの、ご飯とはイマイチのように感じました。これはトンカツに合わせたソースだったのでは? もっと普通のデミグラスソースっぽいと、トンカツより牛カツのほうが相性が良くなってくるのではないかと。ケチャップ感を強くして、トンカツとの相性を引き上げた代わりに、ご飯との相性が少し犠牲になってしまったのかも。
Wikipediaのかつめし・類似料理の項には、「加古川と岡山は距離が近いが、関連性は確認できない」とあります。デミカツ丼とかつめし、似たようで非なるもの。比較してみることで、見えてくるものがあるのかもしれません。
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