第49話

『L・R』アジトにカチコミした後、首都にて。


「……以上が報告です」


「ありがとう。お疲れ様。ヨハン、あなたはゆっくり休んでちょうだい」


「そうさせていただきます。では、失礼します」


 シオンに今回の報告をするとヨハンさんはそのまま謁見の間を後にした。


 ふう、と一息つくとシオンの顔から生真面目さが抜け年頃の女の子の顔に戻る。仕事と私生活で気持ちのスイッチを切り替えているあたり性格の生真面目さは抜けていないかもしれない。


「ええい、来るな!匂い嗅ぐな!」


「っスゥ~……。あぁ、いやされるぅ。ルルたんいいにおい~」


 うわ、顔が溶けてスライムみたいになってる、なんて言ってる場合じゃないな。ルルの顔が爆発寸前まで赤くなってやがる。


「離れてください。ルルが嫌がってるでしょ。……って離れねえな!?」


 どこからそんなに力でんだよ!


 俺の努力むなしくルルから一歩も離れないままシオンは満足のいくまで抱きしめ続けた。ちなみにルル本人は俺が手も足も出ないとわかると目から光が消えて虚空を見つめてしまっている。


 すまないルル。こいつの執念は力では勝てないみたいだ……。


「……ぷはっ、ああー生きかえるぅー。ちっちゃい子最っ高……」


 恍惚とした表情を浮かべる変態首長。


 もうなんかの病気だろこれ。幼女のにおいがないと発作が起きる的なさ。こっちからしたらただ迷惑なだけだから国の医者全員がかりで直してほしいんだけど。


 俺が白い目で見ていることに気がついたのか、トリップから立ち戻ってくると


「ゴ、ゴホン。今回の功績であなたたちの嫌疑は晴れましたが、犯した罪は償い切れていません。ですのでこれからは贖罪として国のために働いてもらいます。つきましては……そのですね……」


 生真面目スタイルの時に言いよどむなんて何を要求してくるんだ?ヴォルガの情報提供?それとも二重スパイとして戻らせれるんだろうか?


 ……いや違う。絶対違う。ルルの方をチラチラ見てるから確実によからぬことだってのはわかる。


「なんでも言え。たいていのことはこなせるぞ」


 ルル、違う、そうじゃない。今こいつに餌与えたら何されるかわかんないぞ。被害を受けるのはお前なんだよ、気づいてくれ。


 ルルの言葉で決心がついたのかシオンは口を開いた。


「私の家に住み込みで働いてもらえないでしょうか!!……あ、目的としてはあなたたちの監督であって、べ、べつに毎日ルルたんに会えるからとかではないですよ?」


 本音が漏れとる……。ほんとにこいつが首長で大丈夫なのかこの国は?いまのところ変態的な言動しかしてないぞ。行くところまで行ったら国民全員幼女計画とかやりそうなんだけど。


「ルル、別にこいつの言うことに従わなくていいぞ」


「……いいぞ」


「へっ?」


「シオンに抱き着かれるのは気持ち悪いが、それで主と暮らせるならいいぞって言っておるのだ」

「きもっ……、オホン。これは命令です。従ってもらいますよ」


 さっきお願いしますって言ってたやつがよく言うよ。


 でもお願いの内容自体、ルルに対する変態行為を除けばなかなかによいものだとは思う。ヴォルガに未練はないしこの国で活躍するのもヴォルガへの嫌がらせになるし悪くない。


「ルルがいいなら俺に文句はない」


「決まりですね!さぁルルたーんおうちいきましょうねー」


 親子のように手をつなぎながら彼女たちが部屋を出ていく。そのあまりにもほほえましい光景に頬を緩ませながら後へついて行った。


 その後シオンが母親代わり、俺が父親代わりに変化するのはまた別の話である。





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 この物語はここで完結します!お読みいただきありがとうございました!!


 カクヨムコンに向けて新作を投稿してます!

タイトルは「魔道整備士のアップデート~研究所の実験動物にされた俺は『自動更新』で成り上がる~」です!


ぜひそちらもお読みください!


URL

https://kakuyomu.jp/works/16817330649688753719/episodes/16817330649728710012


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リサイクルの神獣~ギルドを追放されたゴミ処理冒険者に神獣の子育てを押し付けられてしまったのですべてリサイクルで済ませようと思う~ 紙村 滝 @Taki_kamimura7

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