第48話 決着
俺のアッパーカットを食らって怪物の身体が派手に吹き飛ぶ。
「しつこいんだよ!全部お前のせいだろうが!!勝手に追放したくせに追っかけてきて何様なんだよ!!全部お前が原因なんだよ!」
「オレハ……ツヨ、ク……ナリタカッタ、ダケナノニ……」
「意味わからん。お前が強くなるためになぜ俺を追放する必要がある?」
上体を起こそうとしていた怪物を跳び蹴りで壁際まで吹き飛ばすと、俺はその上に馬乗りになった。
焼けるような匂いが鼻をつく。
「一ゴミ処理員の俺なんてほっといて勝手に強くなればよかったじゃねえか。俺を巻き込むんじゃねえよ。俺はお前の所有物でもましてパーティーメンバーですらない。てめぇがどうこうしていい人間じゃねんだよ」
黒霧は全て吸い取った。目の前にいるのはもはや怪物ですらない。ただの狂気にとりつかれて破滅した人間が涙を流しているだけ。
魔力ストックを使い切り一本の剣を生み出していく。
『風狼剣フェルミウム』──
俺の『コンポスター』とルルの魔力の合わせ技。この元人間に対抗してきた結晶。純粋な魔力で聖剣クラスにまで強化した、ルルの体毛に似た白銀の刃をシュウの喉元に突きつける。
「全部自業自得なんだよ。これで終わりだ」
「ナンデ、オレハワルクナカッタ……アアアアッ!!」
恨みを吐き出すかのような断末魔を叫ぶとボロボロと塵になって崩れ落ちていった。思ったよりもあっけない。これまでこいつにおびえて生きてきたと思うと自分自身が馬鹿らしくなってきた。Sランクがなんだ。俺でも倒せるじゃねえか。
放心したように突っ立ているとルルたちが戻ってきた。
「レン!!大丈夫だったか!?」
「ヨハンさん……大丈夫です。終わりました」
そういえばヨハンさんとルルは何してたんだ?待てとは言ったけどここまで加勢してこないか普通?
「何やってたんですか?」
やべ、口調間違えた。抑えないと。
「奥の部屋に実験施設があったから燃やしてきた。こいつ、いや黒霧は造られたモンスターらしい。ったく人間に対する冒涜だ」
ぎゅっと眉間にしわを寄せて吐き捨てる。
……これで終わったのか。調査という表の依頼も、シュウから逃げるという裏の思惑も達成はしているのになぜか釈然としない。
「……るじ、主!」
はっと隣を見るとルルがじっとこちらを見上げていた。
「ん?ああ、大丈夫だ」
そうだ。今の俺はこいつの母親代わり。それだけを全うすればいい。いや、それこそが最優先だ。
「主。帰るぞ」
ふにゃっと笑うルルにやさしく笑い返す。その守るべき小さな手を取って家路を急ぐのであった。
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