32

夢を見た。夢の中でも微睡んでいたが、そこに女二人、男一人が入ってきた。そして何やら荷物を運びいれてお構い無しに物を置いていく。寝ぼけ眼でそれを見やり、ろくに働かない頭でうっすらと思う。

なに人の部屋に勝手に入ってきてんねんボケが。

だがそいつらは俺を少しだけ迷惑そうに見ただけで、互いに数言交わすと男は出ていき、女はさっさと床で寝入ってしまった。迷惑なのはこちらの方だが、あまりにも堂々とした態度ともしかして悪いのはこちらかという疑念が沸いてきてしまい、どうにも居づらくなって部屋を出た。

出てから気付くが、そこはかつて通っていた大学の寮に似ていた。ただし、部屋に付けられていた札に記された番号は404号室。

おかしい。学生時代は一階住まいで四階に上がる回数だってほとんど無かったはずだ。ましてや他階の他人の部屋に入ったことなんて、片手の指で足りる程度しかない。とにもかくにもここは俺の居場所ではないと悟り、一階へと向かう。

ところが、一階の部屋はかつて俺が知っているものとは様変わりしすぎていた。かつて俺が住んでいた部屋の付近はまるで教室のように廊下から中が見えるようになっており、その大きさも部屋と部屋の壁を取っ払って面積を二倍にしてある。


どこをどう出たのか、見知らぬ小道で紙ゴミがたくさん置かれているようなところで途方にくれていた。

かつて知った場所に自分の居場所はもう無く、家に帰ろうにもその家の場所を思い出せない。思い返せる間取りも、違うこれじゃないと言えるものばかり。

そうこうしている内に夜が明け、ゴミの回収に大量の人が現れる。それらの人たちにもみくちゃにされ、脱出しようともがいて……。

そこで、目が覚めた。

開いた目に映るのは、もう十年以上も暮らした部屋。住所も思い出せる。

いつもとは毛色の違う夢に少しだけひんやりとしつつ、俺はベッドから起き上がった。

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