浮気をしても反省しない彼女への愛が冷めてしまった話 続き
ハイブリッジ
第1話
〈同棲していたアパート〉
「…………」
私、
付き合ってからずっと彼の優しさに甘えてしまっていた。何をやっても彼なら許してくれる。だって彼は私のことが大好きだから。
……そう思っていた。
「…………いやだ」
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。
絶対に絶対に絶対に別れたくないっ!!
だって好きなんだもん!! 大好きなんだもん!!
浮気したのも相手の男が誘ってきたから悪いんだ。私は悪くない!!
……そうだよ。私は悪くないじゃん。全部あいつらが悪いんだ。
スマホに一通の連絡がくる。
『
最近、元気ないけど大丈夫か? もしかして前の彼氏と何かあった? 話聞こか?』
「……………………」
手の届くところに置いてあるものを手当たり次第にベッドへ投げつける。
「ウザいウザいウザいウザいウザいっ!! 誰のせいでこうなったと思ってるんだよっ!! 無視してんだからいちいち連絡してくんじゃねえよっ!!」
彼氏面すんなキモいんだよっ!! 私の彼氏は一人だけだ!!
「はあ……はぁ……」
……また散らかしてしまった。彼に冷たくされてから限界がくると家の物に当たるようになってしまった。
「…………あっ」
散らかっている物の中から彼が着ていたTシャツを見つける。出ていく時に忘れていったのだろうか。
「…………匂いがする」
シャツを手に取り顔を
「………ぅう……すき……だいすき…………だいすきなんだよ」
触れたい、触れらたい。抱きしめたい。抱きしめられたい。
「…………」
彼に私は悪くないってことちゃんと伝えないと。でも今距離を置かれてるし、たぶん話し合いたいって連絡しても無視されちゃう…………。
「………………そうだ」
ちょっと強引だけど……いいよね。後で謝れば許してくれるはず。だって私の彼氏は優しいもん。
「…………絶対に逃がさない。君は私の彼氏だもん」
◼️
〈同棲していたアパート〉
「…………んぅ」
「あっ……目が覚めたんだね、おはよう!」
目の前に満面の笑顔の夏帆がいた。
「夏帆……どうして? ここは……」
ここは夏帆と同棲していたアパートの部屋だ。カーテンも閉めきっていて部屋の中は薄暗い。
僕は確か……大学が終わったから帰ろうとしていて、そうしたら友達に呼ばれて……そこから車に乗せられて……。
「えっ……な、何これ……」
手足がロープでベッドに縛られていて身動きが取れないようになっている。
「動かない方がいいよ。あんまり動くと君の綺麗な体が傷ついちゃうから」
夏帆の言う通り、動こうとするとロープが食い込んでとても痛い。かなり強く縛られているので一人で抜け出すのは困難だ。
「こ、こんなこと良くないよ。早くこのロープ外してよ!」
「いやだ。……君も悪いんだよ。私のこと無視するし離れようとするから」
夏帆が僕の体の上にゆっくりと跨がり、胸に顔を埋める。
「あぁ……君の匂いだ。シャツなんかと全然違う。すぅー……すごく濃くて、はぁ……たまんないよ」
すりすりと顔を何度も胸に擦り付けてくる。
「や、やめてよ」
「やめるわけないじゃん。だってやっと触れられるだもん。どれだけ我慢してきたと思ってるの」
僕の声を無視して夏帆は馬乗りのまま僕の頬を撫でる。
「私なんで浮気なんてしたんだろう。過去の私を殺したいよ。こんなにも君のこと好きなのにあんな最低なことばかりしてさ……」
うつ向いてぎゅっと僕の服を握る夏帆。
「……あっ違う違う。私は悪くないんだった」
「…………」
「君にね見てほしい写真があるの」
そう言って夏帆がスマホを触りだす。
「じゃーん見て見てっ!」
見せられたのは頭から血を流し全身アザだらけで横たわっている男の写真だった。
「なっ……こ、これって……」
「壮馬先輩。あとこいつでしょーそれとあいつもか」
スライドしていくと同じような写真が何枚か続いた。
「聞いて聞いて! あのね私悪くなかったんだよ! 全部こいつらが悪かったの!! こいつらのせいで私は浮気しちゃったんだよ!」
「な、何言ってるの?」
「だからこいつらのせいで私たち別れることになっちゃったんだよっ!? 許せないよね!? 私、頭にきたからボコボコにしてやったの! すごいでしょ褒めて褒めて!」
写っていたアザだらけの男性は今まで夏帆が浮気をしていた相手だったらしい。
「なんでこ、こんな酷いこと……」
「……ふーん誉めてくれないんだ。まあいっか……じゃあ次は君の番だよ」
そう言ってスマホを再び見せられる。写っていたのは一人の女性だ。
「こ、これ……」
「君さ……最近この子と仲良いよね? 浮気かな?」
写真の女性は同じ大学のゼミの子だった。夏帆に浮気されている時やと夏帆と離れている間、すごく親身に色々な相談に乗ってくれた僕の恩人だ。
「や、やめてよその子は関係ないから!」
「関係なくないよ。彼女と君、すっごく楽しそうに話してたもんね。キャンパス内はもちろん、近くのカフェでも……。あっゼミの研究室で二人が他の糞たちからチヤホヤされてたのも知ってるし、今度映画を二人きりで見に行くって約束しているのももちろん把握してるよ」
な、なんで知っているのだろう……。ゼミの研究室のことなんて同じゼミの仲間しか知らないはずだし、映画のことはお互いのスマホでしか連絡を取り合ってないなのに……。
「これは浮気だね。……………許せないなぁ」
「ち、ちがっーー」
「でもねでもね、条件次第では許してあげるかも」
「………じょ、条件?」
「君が私の恋人にもう一度なって、ずっと一緒にいること。……もし君がこの条件を受け入れてくれないなら、この子のこと殺すね」
「そ、そんな……無茶苦茶過ぎる」
「だって嫌だもん。君が他の人に好意を向けるのなんて。私耐えられない」
「…………イカれてるよ」
「ふふっ……。君がこうさせたんだよ」
夏帆が不適な笑みを浮かべる。
「ほらほらどうするの? また私と恋人になってくれるよね?」
夏帆と恋人にならないと何も関係のないあの子に被害が及んでしまう。
今の夏帆なら本当に殺してしまうかもしれない。
「ねえねえ?」
……あの子を傷つけるわけにはいかない。
「…………わかった」
「何がわかったの? はっきり言葉にしてほしいな?」
「……夏帆とは別れないから」
「ずっと私と一緒にいてくれる?」
「…………ずっと一緒にいる」
「……あはっ」
薄暗い部屋の中、夏帆の顔に笑みが溢れる。
「やった……やったーー!! 言ったよね。ずっと一緒にいるって言ったよね! う、嬉しい……あっ録音したからね今の言葉っ! もう後から取り消せないからね!!」
欲しかったおもちゃを買って貰った子どものようにはしゃぐ夏帆。
「……じゃあ恋人に戻った&ずっと一緒にいる記念で今から愛し合おうね」
夏帆と唇を重ねる。その後も何回も何回も繰り返し、口腔内を激しく刺激される。
「ぷはっ…………美味しい。ああもう…………全部好き」
……僕の行動は間違っていたのだろう。
距離を置いたり無視とかしないで僕が夏帆としっかり話し合っていたらこんなことにはならなかったかもしれない。
「これからはずっとずーーーーっと一緒にいようね。……浮気なんて許さないから」
終わり
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