圧倒的な筆致にて描かれるシタ側、サレ側の負のリアルさ生々しさ。

「コイビト・スワップ」でハイクォリティなNTRざまぁを描ききった冷涼富貴さんの新作です。

浮気やNTRを扱った作品は数多くありますが、そこにある負の感情のリアルさ生々しさを描かせたら、私は冷涼さんの右に出る者は居ないと思います。

何故なら、浮気した者とされた者と間男とその周囲、それぞれがどのように考え行動するかを精緻にシミュレートし、物語とするその緻密さと考察の深みが他の追随を許さないからです。フィクション故の不自然な御都合や、芝居じみた嘘臭さのない、まさにもうひとつの、現実。

何をどう考えても挽回不可能な裏切りをしておきながら、頑なに離婚を拒否し、自己中心的に主人公に執着し未練がましくすがり続ける汚嫁、憤怒と消せない劣等感に苛まれ、体の健康までも損なう主人公、その周囲で無責任な言動を押し付ける者、その心の働き、変遷、そのメカニズム・・・・。

冷涼さんの深い人間考察に裏付けられた人の負の心の働きのそのリアルさと「これは確かにある!」と誰もが頷くその説得力に、ひたすら唸らされるのです。

そして作品に関し、誰もが語らずにはいられなくなる・・・・・・。

光明の見えない重苦しく、読んでいて強烈な怒りを掻き立てられるようなドロドロした話ながら、その劇的なまでに圧倒的なリアルは、一度見たら最後、読む者の心を釘付けにし、怖いもの見たさ的に惹き付けて離さない、そんな魔性の迫力と中毒性があります。

是非ご堪能下さい。

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