第2話
私には幼い頃から心の中にもう一人の自分と言うものが存在したように思えます。ここでは、そのもう一人の私をMと呼ぶことに致します。
Mとの私が覚えている限りの最初の会話は、曽祖父の葬儀での出来事です。
曽祖父とは余り接点がなく、実際に会話したことは殆どなく、更には私がまだ幼かったこともあるでしょう。Mは、葬儀の途中で、
「学校がやすめて、お婆ちゃんちに来れていいじゃないか、しんでくれてよかっただろう。」
そう確かに私に語りかけたのです。
信じられませんでした。
しかしそれは確かに私自身の心が生み出した声である事は幼いながらにも十分理解ができました。
私はそのMの感情を殺すために、必死になって悲しむ様な感情を捻り出そうとしましたが、一向に出てこないばかりか、Mのどす黒い感情の渦にあっという間に飲み込まれてしまいました。
人間が1番難しいのは否定系だと言われています。例えばあなたが、今から空を思い浮かべるなと言われても無理でしょう。その様な感覚です。
幼い私は、こんな事を聞いてしまう私は悪い子である。神様がみていらっしゃる。きっと天罰が下るに違いないと恐ろしかったのを覚えています。(特に私はキリスト教信者ではありませんし、それを否定する事で信者を馬鹿にしているつもりではありません)
このきっかけをもって、以後Mは頻繁に私の中に現れては悪魔の一言を残してどこか私の手の届かぬ内へ逃げてしまう様になりました。
独白 榊 琥治 @somnium
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