独白
榊 琥治
第1話
今でも思い返せば、なんとも言えない羞を含んだ幾つもの記憶の欠片が胸に突き刺さりチュクチュクと心を痛めつける様な、或いは心臓の廻りを蟲が蠢く様な底はかとない不快感が私を襲うのですが、この気持と共生して行くことが私の出来る唯一の贖罪でしょう。私は表向きでは常に人畜無害の善人を装いながらも、その実、心のうちにはとてつも無い悪魔を飼っているのです。悪魔というものでは足り無いやもしれません。結局は私は何時でも第一に自己の利益しか考えずにはいられないのです。今こうして筆をとっているのも吐き出せば幾分かは楽になるのでは無いかという最も自己中心的な理由に過ぎません。しかし、どうか、余りにも自己中心的な鎮魂歌にすぎませんが、私の罪を聞いてやっては頂けないでしょうか。そうして私は安堵したいのです。何処かでこの私のどうしようもない行いは人間の性であると正当化している自分がいるのもまた事実であり、それを机上の空論だと認めたくないのです。この愚図を愚図では無い、皆そうであると、この書き殴りの手記の様な自伝を読んだ人が、私に囁いてくれるのを待っているのかもしれません。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます