独白

榊 琥治

第1話

今でも思い返せば、なんとも言えない羞を含んだ幾つもの記憶の欠片が胸に突き刺さりチュクチュクと心を痛めつける様な、或いは心臓の廻りを蟲が蠢く様な底はかとない不快感が私を襲うのですが、この気持と共生して行くことが私の出来る唯一の贖罪でしょう。私は表向きでは常に人畜無害の善人を装いながらも、その実、心のうちにはとてつも無い悪魔を飼っているのです。悪魔というものでは足り無いやもしれません。結局は私は何時でも第一に自己の利益しか考えずにはいられないのです。今こうして筆をとっているのも吐き出せば幾分かは楽になるのでは無いかという最も自己中心的な理由に過ぎません。しかし、どうか、余りにも自己中心的な鎮魂歌にすぎませんが、私の罪を聞いてやっては頂けないでしょうか。そうして私は安堵したいのです。何処かでこの私のどうしようもない行いは人間の性であると正当化している自分がいるのもまた事実であり、それを机上の空論だと認めたくないのです。この愚図を愚図では無い、皆そうであると、この書き殴りの手記の様な自伝を読んだ人が、私に囁いてくれるのを待っているのかもしれません。

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